2004 Fiscal Year Annual Research Report
蚕リボソームに見られる特徴的性質と翻訳効率の関連性
Project/Area Number |
16760633
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
野村 隆臣 信州大学, 繊維学部, 助手 (90362110)
|
Keywords | 蚕 / 生体内タンパク質合成 / 翻訳効率 / リボソーム / 翻訳伸長因子 / GTPaseドメイン |
Research Abstract |
蚕が保有する効率的な生体内タンパク質合成(翻訳)能力がリボソームの性質に起因すると推測し、蚕リボソームの生化学的解析を行った結果、全生物を通じて高度に保存される28S rRNA中のGTPaseドメインの一部の塩基が変化していることが明らかとなっている(U1094CとA1098G:大腸菌の塩基番号に従う)、この領域は翻訳の速度に直結する翻訳因子依存のGTP加水分解反応に関与することから、この塩基置換が蚕の効率的な翻訳能力の要因であると考え、C1094/G1098を大腸菌rRNAに導入した変異型大腸菌リボソームを作製し、そのリボソーム機能の解析を試みた。 使用した大腸菌rRNA発現用プラスミドには、ストレプトアビジンに特異的に結合するRNA配列が23S rRNAの進化的に保存性の低い領域(Helix25)に挿入してあり、このプラスミドを形質転換した大腸菌株(DH-5)を、P_L プロモーター制御下で培養温度をシフト(30℃から42℃)することによりプラスミドからのリボソームの発現を誘導した。大腸菌染色体中には7つのrRNAオペロンが存在するため、菌体内のリボソームは、染色体に由来するリボソームと、ストレプトアビジン結合タグが付加したプラスミドに由来する変異型リボソームの混合状態となる。大腸菌より抽出した混合リボソームサンプルをストレプトアビジン固定化カラムによるアフィニティ精製を行うことにより、プラスミド由来のリボソームのみを単離することに成功した。得られた蚕型塩基置換を保持した大腸菌リボソームは野生型と同様のタンパク質成分で構成されていることが確認された。また、翻訳伸長因子に依存するリボソーム機能は、野生型の3-4割の活性を示し、蚕型配列は翻訳効率を高めるというよりはむしろ制御に関与していることが示唆された。現在翻訳過程全体におよぼす影響を解析中である。
|