2005 Fiscal Year Annual Research Report
乱流プラズマの輸送構造同定のための統計力学手法に関する研究
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16760683
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
松本 太郎 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 核融合研究開発部門, 研究職 (50354676)
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Keywords | 電子温度勾配 / イオン温度勾配 / ジャイロ流体モデル / フラクタル次元 / 確率密度関数 / 統計解析 / トカマクプラズマ / 乱流輸送 |
Research Abstract |
磁場閉込め方式の核融合研究において、閉込め性能を左右する乱流輸送の機構解明とその制御が重要な課題である。近年の研究から磁場閉込めプラズマは高い自律性を有し、様々な時空間スケールの乱流と層流が混在した揺らぎのダイナミクスを通じて、内部輸送障壁を始めとした多彩な構造を形成することが明らかとなってきている。本研究では、プラズマの乱流状態の定量的な同定手法の確立を目的として、電子系のダイナミクスによって形成される電子温度勾配(ETG)乱流に関して、スラブシア配位におけるジャイロ流体シミュレーションを行い、帯状流形成等の乱流構造の変化が相関次元、確率分布関数(PDF)、相互相関、バイコヒーレンス等の統計量に与える影響を系統的に明らかにした。 磁場構造の半径方向の変化が小さい(弱磁気シア)領域では、強い電子加熱等により電子温度勾配が急峻になると、「帯状流」と呼ばれる半径方向に依存して交互に存在ポロイダル方向の層流が形成され、電子系の熱輸送が低減すると考えられている。このような帯状流がもたらすポロイダル方向のドップラー効果は、帯状流と共に存在する「乱流揺動」の特性を変化させるため、短波長・短時間スケールの渦を伴うETGモードの顕著な領域と、帯状流とETGモードの相互作用で生成された、大きな渦を伴う長波長のケルビン・ヘルムホルツ型(KH)モードの顕著な領域が、半径に依存して交互に存在することが明らかとなった。ここで、乱流プラズマ中で熱輸送を生み出す原因となっている圧力揺動とポロイダル電場の相関の解析から、ETGモードが顕著な領域では、「等方乱流」の場合と比較して、圧力と電場のコヒーレンスが減少し、その積である熱流束の振幅の時間平均値が小さくなる。一方、KHモードが顕著な領域では、コヒーレンスは減少しないが、圧力と電場の位相差が広い周波数帯に渡って、正味の熱流束を生み出さない位相(-π/2)に同調することにより、熱流束の振幅自体が小さくなることが判明した。これにより、帯状流が支配的な乱流プラズマでは、異なる二つの素過程により系全体の熱輸送が低減されることが世界で初めて明らかとなり、輸送障壁の物理機構との関連が着目されている。 強い簡潔性を示す乱流状態では、乱流揺動は8-10程度の高い次元を有し、熱流束のPDFは、磁気シアおよび温度勾配に依存しない相似的なtail成分を持つことが、世界で初めて明らかとなった。このPDFの相似性が成り立つパラメーター領域では、熱流束のバーストが生じる頻度、及びそれが輸送に占める割合の評価が可能となる。一方、帯状流が形成されると次元は3-4程度まで減少すると共に、tail成分も減少することが示された。これは、乱流揺動の相関次元が、帯状流の強度の減少関数であることを意味している。
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