2004 Fiscal Year Annual Research Report
高エネルギー重イオン誘起水中化学反応の時間・空間解析研究
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16760693
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
田口 光正 特殊法人日本原子力研究所, 材料開発部, 副主任研究員 (60343943)
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Keywords | 重イオン / 水中化学反応 / 時間分解吸収分光 / 微分収率 / OHラジカル / 初期活性種 / 比エネルギー / LET |
Research Abstract |
高エネルギー重イオン照射によって引き起こされる水中化学反応を解明するために、照射直後に生成する活性種の挙動について、エネルギー付与分布に基づいたトラック内化学反応の時間・空間解析を行うことを目的とした。そのために、申請期間で(1)活性種の時間的挙動を直接観測できるナノ秒時間分解分光システムを構築しダイナミック解析を行うと同時に、(2)活性種の空間的な挙動解析に優れた初期活性種の微分解析を行う。今年度は、(1)高エネルギー重イオンの誘起する水中化学反応をナノ秒の時間分解能で測定できる装置を世界で初めて構築した。重イオンの飛程の短さと分析光に付随する測定上の困難さを克服するために、シンチレータからの発光を分析光とした時間分解吸収分光法を開発した。時間分解能は1ナノ秒以下であり、観測範囲はシンチレータを変えることで可変となる。絶対値測定は出来ないものの、水和電子の光吸収現象を観測することに成功した。(2)重イオンの質量やエネルギーによって決定される反応収率(微分収率)を見積もるための照射及び解析方法を確立した。水中の放射線化学反応において、非常に重要な役割を担うOHラジカルの収率について、同-イオン種では照射するエネルギーとともに収率が大きくなること、同-エネルギーで比較した場合には、原子番号が大きくなるほど収率が小さくなることを明らかにした。つまり、高エネルギー重イオンによって生成する初期活性種収率を、初めて実験的に正確に求めることができた。 これらの結果により、重イオン誘起反応の物理的過程から化学的過程が繋がることになり、初期活性種の初期分布やその後の拡散や反応など時間分解3次元化学反応モデルの構築が期待される。さらに、従来から用いられているLET(線エネルギー付与)とは全く異なる、照射イオンの質量とエネルギーを用いた照射効果を表す新規パラメータの提案が可能となる。
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