2004 Fiscal Year Annual Research Report
高エネルギー粒子線を用いた磁性体薄膜局所改質の制御と評価法の開発
Project/Area Number |
16760694
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
知見 康弘 特殊法人日本原子力研究所, 物質科学研究部, 研究員 (30354830)
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Keywords | 高エネルギー粒子線 / 磁性体薄膜 / 磁性局所改質 / Fe-Niインバー合金 / キュリー温度 |
Research Abstract |
本年度は、照射実験に用いるための良質なFe-Niインバー合金薄膜の作製を試みた。RFマグネトロンスパッタリング装置でFe-32at.%Ni合金ターゲットを用いて、単結晶サファイア(α-Al_2O_3)、単結晶酸化マグネシウム(MgO)、非晶質二酸化ケイ素(SiO_2ガラス)の各基板上にFe-Ni薄膜(膜厚約500nm)を作製した。基板温度の制御は行なわなかった。X線回折法により薄膜の結晶構造を調べたところ、いずれも体心立方(bcc)構造になっていることがわかった。Ni組成が32at.%付近では、室温でα相(bcc構造)とγ相(面心立方(fcc)構造)とが共存しているが、作製した薄膜ではfcc構造を示すX線回折ピークは観測できなかった。また約500℃以上ではγ相のみとなるため、赤外線ゴールドイメージ炉を用いて10^<-5>Pa台以下の真空中で1時間熱処理を行なった。その結果、600℃以上の温度で熱処理した薄膜ではbcc構造からバルクのFe-Niインバー合金と同様のfcc構造に転移することがわかった。これらの薄膜について、交流磁化率の温度依存性を測定したところ、キュリー温度が約160〜200℃であったため、薄膜の組成はFe-32at.%Niに近いと考えられる。また、600℃熱処理薄膜の場合には、強磁性から常磁性への転移が室温から200℃付近までの広い温度範囲にわたっていることから、組成の分布が広がっており熱処理が不十分であったことが推察される。これに対して、800〜1000℃で熱処理した薄膜では、キュリー温度での転移幅が狭くバルクのインバー合金の特性に近付くことがわかったが、1000QC熱処理薄膜において磁気異方性の高い試料に特有の交流磁化率の温度依存性が見られたため、磁性酸化物の信号を捕らえている可能性があり、熱処理による酸化の影響に細心の注意を払う必要があると思われる。
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