2005 Fiscal Year Annual Research Report
高エネルギー粒子線を用いた磁性体薄膜局所改質の制御と評価法の開発
Project/Area Number |
16760694
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
知見 康弘 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門, 研究員 (30354830)
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Keywords | 高エネルギー粒子線 / 磁性体薄膜 / 磁性改質 / Fe-Ni合金 / キュリー温度 / 弾性的相互作用 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度にγ相(面心立法(fcc)構造)となるよう作製条件を定めたFe-Ni合金薄膜試料を用いて高エネルギー粒子線照射実験を行なった。薄膜試料(膜厚約500nm)は、単結晶サファイア(α-Al_2O_3、(0001)面)、単結晶酸化マグネシウム(MgO、(100)面)、非晶質二酸化ケイ素(SiO_2ガラス)の各基板上に作製したものを用いた。照射粒子は、日本原子力研究開発機構東海研究開発センターのタンデム加速器からの高エネルギー重イオン(200MeV ^<197>Au,及び200MeV ^<136>Xe)を用い、室温で照射を行なった。照射効果を制度よく検出するために、1個の照射試料の半分をマスクで隠し、半分だけが照射されるようにした。照射試料の交流磁化率の温度依存性を測定したところ、いずれの基盤を用いた試料でも照射前と同じ1種類のキュリー温度しか観測されなかった。一方、アルミ箔(厚さ15μm)を透過させてエネルギーを200MeVから約20MeVまで減衰させた^<197>Au及び^<136>Xeイオンを用いて同様に照射効果を調べてみると、いずれの試料でも2種類のキュリー温度が観測され、照射された領域だけ部分的にキュリー温度が約15〜20度上昇することがわかった。^<197>Auイオンについて考えてみると、エネルギーが200MeVから約20MeVまで減衰するとき、Fe-Ni合金中での電子的阻止能は54MeV/(mg/cm^2)から8MeV/(mg/cm^2)まで減少するが、逆に核的阻止能は0.6MeV/(mg/cm^2)から3MeV/(mg/cm^2)まで増加する。従って、照射領域のキュリー温度の上昇は、入射粒子からターゲット(Fe-Ni合金)原子への弾性的相互作用によるエネルギー付与(原子変異過程)に起因している可能性が高い。
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