2004 Fiscal Year Annual Research Report
イオンビームによるナノ空間制御高分子電解質膜の合成と燃料電池膜への応用
Project/Area Number |
16760700
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
八巻 徹也 特殊法人日本原子力研究所, 材料開発部, 研究員 (10354937)
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Keywords | 燃料電池 / 高分子電解質膜 / プロトン伝導性 / 高速重イオン照射 / 潜在飛跡 / イオン穿孔膜 / 放射線グラフト法 / ナノ構造・空間 |
Research Abstract |
今年度は、イオンビームの核種やエネルギー、高分子基材の種類などを選択することにより、潜在飛跡や化学エッチング後に得られる穿孔の大きさをナノスケールで制御し、そこへ導電性基を放射線グラフト反応で導入する技術を開発した。 (1)イオン穿孔の形成:ポリフッ化ビニリデン膜に3.5MeV/nの^<129>Xeイオンをフルエンス3.0×10^6〜3.0×10^8ions/cm^2で照射した後、濃度3〜9mol/Lの水酸化カリウム水溶液に浸漬し、800℃で所定時間エッチングすることでイオン穿孔膜を得た。得られた穿孔は、膜断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察と放射線感度Q値の計算から、円柱状貫通孔であることが確認できた。 次に、耐熱性、機械的強度に優れた炭化水素系高分子としてポリパラフェニレンテレフタルアミドに着目し、そのイオン穿孔膜の作製を試みた。40℃、pH=9の次亜塩素酸ナトリウム水溶液でエッチングしたところ、照射核種の質量が増大するにつれてQ値は上昇し、これによりイオン穿孔の形状も漏斗状から円柱状に変わっていくことが明らかになった。 (2)導電性グラフト鎖の導入・結合:イオン穿孔膜にγ線を前照射し、スチレン溶液を孔内に充填後、グラフト重合を行った。その結果、3〜200%のグラフト率が得られたが、膜全体にグラフト鎖が導入されないようにするためには、極めて短い時間で反応を停止しグラフト率を低く制御する必要があることがわかった。グラフト後の穿孔膜のSEM観察から、孔内にポリスチレンが充填されていることが示された。 また、^1H、^<15>N、^<20>Ne、^<40>Ar、^<84>Kr、^<129>Xeを照射し、潜在飛跡内に高密度で形成されたラジカルを開始点にして、スチレンのグラフトを試みた。このようなγ線グラフト重合法と同様の簡便な手順でも、グラフト鎖の導入が可能であることがわかった。
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Research Products
(6 results)