2005 Fiscal Year Annual Research Report
イオンビームによるナノ空間制御高分子電解質膜の合成と燃料電池膜への応用
Project/Area Number |
16760700
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
八巻 徹也 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究職 (10354937)
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Keywords | 燃料電池 / 高分子電解質膜 / プロトン伝導性 / 高速イオンビーム照射 / 潜在飛跡 / イオン穿孔膜 / 放射線グラフト法 / ナノ構造・空間 |
Research Abstract |
今年度は、イオンビーム潜在飛跡の化学エッチングによる穿孔形成、導電性基の導入・結合に関して、前年度までに開発、最適化した手法を利用することで、固体高分子型燃料電池(PEFC)用の「ナノ空間制御高分子電解質膜」を作製した。 (1)PEFC膜性能の評価と作製条件の最適化:ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に3.5MeV/nの^<129>Xeイオンをフルエンス3.0×10^9ions/cm^2で照射した後、濃度9mol/Lの水酸化カリウム水溶液に浸漬し、80℃で所定時間エッチングすることで孔径を100nmに制御したイオン穿孔膜を得た。このイオン穿孔膜にγ線を前照射し、スチレン溶液を孔内に充填後、50分以内という極めて短い時間でグラフト重合を行った。グラフト後のスルホン化によって得られた電解質膜は、最高3.5mmol/gに達する非常に高いイオン交換容量を示した。 次に、電極で挟み込んだ膜厚方向と、電極が重ならないように膜の表と裏に配置した面内方向のプロトン伝導率を比較したところ、イオン交換容量が1.6mmol/gの電解質膜において、前者は0.03〜0.04S/cmであったのに対し後者は測定限界以下であった。このような異方伝導性が確認できたことから、一次元的なナノスケール伝導経路を持つ電解質膜を作製可能であることがわかった。さらに、実際のPEFCで重要となる膨潤特性、燃料阻止性を評価した結果、両者とも実用化に向けた要求性能を満たしていることが明らかとなり、本電解質膜の高い応用性が示された。 (2)総括:(1)の結果を検討することにより、孔径を100〜300nmに制御し孔密度を10^9/cm^2以下に抑えた上で、導電性基の充填密度をできる限り高めることが電解質膜性能の向上には不可欠であることがわかった。
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Research Products
(8 results)