2005 Fiscal Year Annual Research Report
「コスモポリタン的」動物プランクトンの生活史特性と遺伝子組成の湖沼間比較
Project/Area Number |
16770011
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
牧野 渡 東北大学, 大学院生命科学研究科, 助手 (90372309)
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Keywords | 動物プランクトン / DNA / 生活史 / カイアシ類 / ヤマヒゲナガケンミジンコ / Acanthodiaptomus pacificus |
Research Abstract |
1)今年度はAcanthodiaptomus pacificusを日本全国から採集した。すなわち北は北海道・松山湿原や浮島湿原の池塘群、加えて羅臼および知床の湖沼群から、南は九州・霧島山系の火口湖(大浪池、六観音御池、白紫池、不動池)まで、全国105地点から遺伝子解析用のサンプルを得ることができた。これに加えて、弘前大学の大高教授から都合5地点分のサンプルを提供していただいた。先生のご好意に感謝いたします。 2)サンプルは採集直後にエタノールで固定し実験室に持ち帰り、既報に従いDNAを抽出した。これをテンプレートとして増幅対象領域(ミトコンドリアDNAのCOI領域)に特異的なプライマーセットとともにPCRに供し、得られた産物を精製後、BigDye terminatorを用いたサイクルシーケンシング法とオートシーケンサーにより塩基配列を決定した。なお用いたプライマーセットは、フォワード側がLCO1490(GGT CAA CAA ATC ATA AAG ATA TTG G)、リバース側がHCO2198(TAA ACT TCA GGG TGA CCA AAA AAT CA)である。 3)得られた塩基配列データをもとにベイズ推定法にて系統樹を作成したところ、国内のA. pacificus集団は明瞭な3つの地域グループ、すなわち「北海道・北東北グループ」、「南東北・関東グループ」、および「北陸・中部・近畿・九州グループ」に分別された。AMOVAの結果、国内のA. pacificus集団の遺伝構造の変異の約9割が地域グループ間での変異で説明された。また塩基配列を地域グループ間で比較すると、異種間での変異に相当する大きな変異が認められたことから、国内のA.pacificus集団が実は隠蔽種の集合体である可能性が考えられた。
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