2005 Fiscal Year Annual Research Report
深海性小型底生生物の群集構造・種多様性の空間変異とその決定要因に関する研究
Project/Area Number |
16770012
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
嶋永 元裕 東京大学, 海洋研究所, 助手 (70345057)
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Keywords | 深海 / 底生生物 / メイオベントス / 底生カイアシ類 / 種多様性 / 群集構造 / 空間変異 |
Research Abstract |
深海底生生物の小スケールの種多様性(局所多様性)は浅海より高い事が知られているが,深海性線虫類では,よりスケールの大きい地域スケールでは,種多様性はあまり高くない可能性が近年報告されている.「種多様性が非常に高い」とされている深海の多様性をより正確に把握するためには,局所多様性だけではなく,種組成の空間変異の程度を抑える必要がある. 深海性底生カイアシ類の代表グループであるセルヴィニド類(Cerviniidae:体長約1mm)の,相模湾内外における群集構成と多様度のkmスケールの空間変異を,水深500-1500m,水平方向で約50kmの範囲に分布する12の測点において採集された堆積物中の成体標本を用いて調べた.通常,底生生物の多様度のピークは水深2-3000mに存在するが,相模湾のセルヴィニド類にはそういった傾向はなく,むしろ水深が深くなるにつれて種多様度は単調に減少していく傾向が見られた.相模湾内のほとんどの測点でNeocervinia itoiが最も優占して存在した.相模湾外の1測点からは形態分類が可能な成体標本が得られなかったが,N.itoiの幼体らしき標本が得られている事から,この種の分布範囲は,水深で1000m,水平距離で50km以上ある事が示唆された.多変量解析(Detrended correspondence analysis)の結果,相模湾内で最も種構成の異なる測点間の非類似度は2.4SDである事が分かった.完全に種構成が異なる測点間で非類似度は4SDである事から,数十kmスケールでは,セルヴィニド群集の種構成は完全に入れ替わらず,このグループの地域多様性はあまり高くない事が示唆された.また,群集の種構成の空間変異に最も貢献する環境要因は,堆積物粒度組成や堆積物中の有機物量ではなく,水深,あるいはそれに関連する何らかの環境要因である可能性も示めされた.
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