2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16770016
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
久米 篤 富山大学, 理学部・生物圏環境科学科, 助教授 (20325492)
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Keywords | 気孔 / 分散 / レプリケーション / マテバシイ / 樹液流 / 光環境 / ハイマツ / 群落蒸散量 |
Research Abstract |
森林群落からのCO_2フラックスやH_2Oフラックスの評価には,樹冠構造と乾燥度,樹幹から葉への水分供給と,それに対応した気孔による調節機構の解明が重要である。本年度はいくつかの角度から気孔開度と蒸散の関係を解析し重要な結果を得た。日本産樹種21種の気孔形態と気孔コンダクタンスの関係について検討し,その結果,気孔長と気孔密度の間には負の相関関係があること,常緑広葉樹の気孔は落葉広葉樹に比べ孔長が揃っているが,開孔幅は逆にばらつきが大きい傾向があった。また,気孔形態の日変化については,孔長さは1日を通じてほぼ一定であるが,開孔幅は光合成・蒸散に対応して日変化を示した。各時刻における気孔開孔幅の分散解析から,気孔は基本的に光合成・蒸散に対応して開閉するが,気孔開度は正規分布するある一定の分散を持ちながら変動していた。気孔形態データから個葉の気孔コンダクタンスが推定可能であった。さらに,葉の全ての気孔が全開になった値(理論的には葉の物理的な気孔コンダクタンスの上限)を計算し,葉の細胞生理学的なガス交換能力に対する気孔開度の余裕度を検討した。 樹体内水動態の解析を放射孔材樹種であるマテバシイについて行い,ヒートパルス法による樹液流速測定と木材解剖学的な構造との関係を明らかにした。さらに,樹液流測定精度向上に必要ないくつかの技術を提案した。 樹高が低いために気孔の樹冠内動態を追いやすい富山県・立山高山帯の2つのハイマツ群落において,個葉レベルの測定から群落蒸散量を推計した。その結果,夏期の晴天日にはハイマツ群落は10mm/day程度という非常に大量の蒸散を行っていた。また,平地のアカマツと比較して高山のハイマツの気孔は茎からの水供給の変化に対して非常に敏感に反応していた。 樹冠構造と林分の立地の関係から林内の光分布を推定するための簡易式を考案し,下層植生との対応関係を比較した。
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