2005 Fiscal Year Annual Research Report
線虫の加齢にともなう行動様式の変化とその神経メカニズムに関する研究
Project/Area Number |
16770054
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
松浦 哲也 岩手大学, 工学部, 講師 (30361041)
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Keywords | 線虫 / 加齢 / 化学走性 / 行動生理学 / フェロモン |
Research Abstract |
1.線虫の加齢にともなう化学走性行動と物質選択性の変化 これまでに、線虫の加齢にともなう化学走性行動の変化が、運動能力の変化によってもたらされることを明らかにした。そこで、運動能力の比較的高い3齢幼虫(L3)、ヤングアダルト(YA)、アダルト(A1)を用いて誘引物質0.6M酢酸ナトリウム(Na)と0.1%ジブセチル(Dia)の対提示条件下における選択性の変化について解析を行った。その結果、(1)対提示条件下でL3はNa側に多くの個体が誘引されるが、これは単独提示下においてDiaよりもNaに対する誘引率が高いことを反映していること、(2)単独提示でYAはNaよりもDiaに強く誘引されるにも関わらず、対提示条件下で同程度の誘引率を示すことからNaに強い感受性を示していること、(3)単独提示条件下でA1は、NaとDiaに対し同程度の誘引率を示すが、対提示実験ではDia側に多くの線虫が誘引されることが明らかとなった。長寿命daf-2変異体や短寿命mev-1変異体を用いても同様の結果が得られた。これらの結果は、YAからA1ステージにかけて物質選択における神経システムに何らかの変化が引き起されていることを示唆している。 2.線虫の誘引行動に及ぼすフェロモンの影響 誘引物質に対する野生型線虫の誘引率は、個体密度の増加にともない低下する。一方、フェロモン産生異常変異体(daf-22)の化学物質に対する誘引率と個体密度の間に有意な相関は認められず、誘引物質域に高密度daf-22を置いた状態での誘引率は、置かない場合と同程度であった。これらの結果は、線虫の誘引行動にフェロモンを介した個体密度感知システム-ある種のコミュニケーション-の存在を示唆している。加齢変化と関連付けた新たな実験系の立ち上げに貢献できるものと考えられる。 3.ニューロン応答の計測 感覚ニューロンレベルにおける受容能の加齢変化を解析するには電気生理学的な調査が不可欠である。これまでニューロン活動をモニターするための実験装置のセットアップを行ってきた。しかし借用予定だった装置が使用できないなど諸般の事情により、現在も準備段階である。
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