2005 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア産ヤブマオ属植物における無融合生殖種の起源と進化過程の解析
Project/Area Number |
16770061
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
米倉 浩司 東北大学, 植物園, 助手 (00302084)
|
Keywords | ヤブマオ属 / カラムシ / Boehmeria clidemioides / Boehmeria dolichostachya / ヤマヤナギ / シライヤナギ / ヤナギ科 / タデ科 |
Research Abstract |
日本のカラムシ(広義:Boehmeria nivea (L.)Gaudich.)は従来中国から古い時代に渡来したものと考えられているが、島根県では山中の林下に生育しており、この場所のものは民家周辺に生育している普通のカラムシとは葉の毛の性質が異なっていた。標本調査の結果、これと同じ型のものは日本では中国地方〜近畿地方北部に集中して存在することが明らかになった。島根県での生育環境を考慮すると、この型は日本在来のものである可能性が高い。日本の変種の中で最も古くに記載されたvar. concolor Makinoは近畿地方北部の標本に基づいているので、この型に対してつけられた可能性がある。 中国地方南部において最も普通に見られるBoehmeria clidemioides Miq.は、従来その大部分が変種var. diffusa (Wedd.) Hand. -Mazz.に当てられているが、Boehmeria clidemioides var. clidemioidesとvar. diffusaは少なくともミャンマーでは明らかに異なる分布標高と形態的特徴を持つこと、中国のものの大部分はそのどちらとも異なることが明らかになった。また、標本調査の結果、タイ北部から記載されたvar. plantyphylloids Yaharaは、Flora of Chinaで扱われている通りvar. clidemioides Miq.と区別できないことが明らかとなった。 従来中国固有とされてきたBoehmeria dolichostachya W.T.Wangがベトナムにも産することが明らかとなった。 ヤブマオ属とは別に、日本産ヤナギ科植物についても、ヤマヤナギSalix sieboldiana BlumeとシライヤナギS.shiraii Seemenに関して標本調査を行った。前者はかつては多くの種に区別されてていたが、これらの中で九州南部に生育するサツマヤナギと呼ばれた型はヤマヤナギの変種として区別可能であるが、それ以外の型は明確に区別することが困難であることがわかった。後者のうち、関東山地と長野県に生育するものは典型的なものとは少し異なり変種として区別できること、埼玉県から記載されたチチブヤナギがこれに当たることがわかった(Ohashi and Yonekura, in press)。 また、オランダ国立標本館ではシーボルト標本の調査をも行った。結果、ダイオウ属(タデ科)と同定されていた標本が、実はウバユリ(ユリ科)の葉に過ぎないことが判明した。
|