2004 Fiscal Year Annual Research Report
種の境界が不明瞭なフキバッタ亜科昆虫の進化経路の探索
Project/Area Number |
16770069
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
立田 晴記 独立行政法人国立環境研究所, 化学物質環境リスク研究センター, 主任研究員 (50370268)
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Keywords | 系統地理 / 種分化 / 染色体変異 / 生殖隔離 / DNA / 形態測定学 / フキバッタ亜科 |
Research Abstract |
2004年度は北海道および本州に分布するPodisma属のフキバッタを採集し,それらのミトコンドリアDNAの2遺伝子について,ダイレクトシークエンス法による塩基配列の決定を行った.また決定された配列に基づき,近隣結合法による地域個体群間の系統樹,およびTempleton-Crandall-Singの方法に基づくDNAネットワークを構築した.これまでの研究から,Podisma属のサッポロフキバッタで地域毎に染色体変異が見られることが明らかになっていたが,今回の研究から,異なる染色体のタイプは異なるミトコンドリアのハプロタイプを持っていることが明らかになった.更に派生型と考えられているXY/XX染色体レースについては,そのほとんどが同じハプロタイプを持つのに対し,祖先型と考えられるXO/XX染色体レースの個体は様々なハプロタイプを有することが判明した.特にXO/XXレースについては,北海道北部集団が類似したハプロタイプを持つ一方,道央に分布する個体のハプロタイプはバラエティーに富んでおり,現解析からは明瞭なグループを形成しなかった.本州に分布するクサツフキバッタでは,サッポロフキバッタほど染色体構造に変異が見られないが,FISH法に基づく解析からは特徴的な種内変異が存在することが明らかになった.これらの結果に基づき,来年度はサンプル数を増やしDNA解析を継続すると共に,収集した標本の形態データを取得し,形態-染色体-DNAそれぞれのまとまりがどの程度一致するのか調査する.また別属で,同じく種内変異が大きいセトウチフキバッタParapodisma setouchiensisについてもDNA変異がどの程度存在するのか,解析を開始する.
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