Research Abstract |
本年度は解析に用いる標本採集の継続,論文作成,および核ゲノム上のマイクロサテライト配列を判読するためのプライマー開発を主に実施した.まず標本採集については,北海道,本州からPodisma属バッタ2種(サッポロフキバッタ,クサツフキバッタ)およびParapodisma属昆虫2種(キンキフキバッタ,セトウチフキバッタ)を複数地域から採集し,現在核型解析,および分子解析を進めているところである.また論文作成に関しては,北海道のサッポロフキバッタについて異なる染色体レースの系統関係と進化様式の推定を試みた論文を作成し,米国昆虫学会誌に投稿,受理された,個々で注目すべき結果は,北海道東部に分布する常染色体-性染色体融合タイプ(XY/XXタイプ)は異なるミトコンドリアハプロタイプを保持しており,染色体の転座が1回のみ生じたとされる仮説が支持されなかった.この結果を受け,従来の核型集団(XO/XXタイプ)と変異集団(XY/XXタイプ)との境界地域において重点的サンプリングを実施し,染色体レース間での交雑が野外で生じているか否かを今後検討する,またPodisma属における集団間の個体の移動や配偶様式の推定に使えるマイクロサテライト遺伝子座を計6つ探索することに成功し,現在専門誌にその成果を投稿中である.発見された6つの遺伝子座のうち4つで,対立遺伝子のヘテロ接合度が期待値よりも低いことが判明しており,小集団化に伴う近交度の上昇が背景にあるものと予想された.
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