2006 Fiscal Year Annual Research Report
種の境界が不明瞭なフキバッタ亜科昆虫の進化経路の探索
Project/Area Number |
16770069
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
立田 晴記 独立行政法人国立環境研究所, 環境リスク研究センター, 主任研究員 (50370268)
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Keywords | 種分化 / 染色体 / 地理的変異 / 分子マーカー / 系統地理 / 形態測定 / 多変量統計学 / 蛍光in situハイブリダイゼーション |
Research Abstract |
2006年度はサッポロフキバッタ,セトウチフキバッタの新たな解析用標本の採集を実施するとともに,これまで蓄積された研究成果の論文化を実施した.サッポロフキバッタでは異なる染色体レースの起源を分子系統学的手法を用いて探ったところ,新たに生じたと考えられる染色体レース(XY/XXレース)が単系統群を形成しなかったことから,種内で生じた染色体の融合プロセスが複数回に渡って生じた可能性,また染色体の融合が起こった後,地理的に近接した異なる染色体レース間で2次的接触による遺伝子浸透が生じた可能性が示唆された.これまでの調査から異なる染色体レースが近接する地域から重点的に標本を採集し,その遺伝構造を新たに開発したマイクロサテライトマーカーを用いて解析を進めている.これらの成果の一部については既に論文化され,国際専門誌に発表した.またセトウチフキバッタについては中国地方において交尾器形質に形質置換と思われる種内変異が観察されており,現在生息環境と形態変異の関係を解析した結果を論文化しているところである.またミトコンドリアDNA,核DNA上の遺伝多型を種内で比較するための準備を行った.最後にサッポロフキバッタの近縁種と考えられるクサツフキバッタについては核上に存在するマイクロサテライト遺伝子座6座分の変異情報を7カ所の地域個体群から採集した標本より抽出し,集団遺伝学的解析を進めている.更に近縁関係にあるサッポロフキバッタ,クサツフキバッタの細胞レベルで観察される余剰染色体の起源をマイクロダイセクション法を用いて調べたところ,両種でB染色体を校正する遺伝子組成が異なっており,同一起源では無いことが強く示唆される結果が得られた.これらの成果の一部は論文化され,国際専門誌に受理されている.
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