2006 Fiscal Year Annual Research Report
糸状菌由来α-ガラクトシダーゼの結晶構造解析及び基質認識機構の解明
Project/Area Number |
16770082
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
藤本 瑞 独立行政法人農業生物資源研究所, 植物科学研究領域タンパク質機能研究ユニット, 主任研究員 (20370679)
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Keywords | Mortierella vinacea / α-ガラクトシダーゼ / 糖タンパク質 / X線結晶構造解析 |
Research Abstract |
糸状菌Mortierella vinaceaが生産する2種類のα-ガラクトシダーゼ(αGal-I、αGal-II)のうち、ガラクトマンナンなどの基質の末端ガラクトースにのみ作用し、そのGalα1,6Manグリコシド結合を切断するα-ガラクトシダーゼI(αGal-I)のX線結晶構造を元に、その基質特異性発現機構を解明することを目的に研究を推進した。前年度までに得られた結晶構造以外に異なる2つの空間群I422、P42_12の結晶を用いて、2.1,2.6Å分解能のX線回折データを取得し、分子置換法によりそれぞれのデータを利用してαGal-Iの立体構造を決定した。3つの空間群に共通して4回回転軸が存在し、それぞれ4回回転軸上に形成する四次構造が非常によい一致を見せたことから、αGal-Iの4量体構造が非常に安定に存在することが明らかとなった。リガンド複合体の作製も試みたが、使用したリガンドとの複合体の構造は得られなかった。4量体の分子間奥に触媒部位が存在しているため、結晶となった分子にはリガンドが入りにくいと考えられた。また、4量体構造をとった際に、触媒部位の周辺に本酵素の糖鎖修飾部位が集まっており、結晶中ではリガンドの取り込みが起こりにくくなっていると考えられたが、この構造は溶液中でプロテアーゼなどからの分解を逃れるための戦略であることが示唆された。ガラクトース複合体の構造が得られているイネα-ガラクトシダーゼの立体構造と比較すると、触媒部位近傍のトリプトファン残基の位置が1Å程ずれており、ガラクトースを認識する触媒穴が拡がっていることが明らかとなり、基質認識時にはこのトリプトファンが動いて基質を固定する役割を担っていると考えられた。最終的に、本酵素の四次構造形成と基質認識機構の関連性について明らかにすることができた。
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