2004 Fiscal Year Annual Research Report
PICT-1による癌抑制遺伝子産物PTENの活性制御機構の解析
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16770107
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
前濱 朝彦 財団法人東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所, 研究員 (40322755)
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Keywords | 癌抑制遺伝子 / イノシトールリン脂質 / 細胞内シグナル伝達 |
Research Abstract |
癌抑制遺伝子産物PTENの機能損失はホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸を介する細胞内シグナルの恒常的な活性化を惹起する。本研究では、PTENに結合しそのターンオーバー(分解)を制御するPICT-1タンパク質に関して、その制御機構の分子メカニズムおよび本制御機構の異常によるPTENの機能損失と腫瘍病変形成との連関性を解析した。 1、PICT-1によるPTENのリン酸化制御 RNA干渉法によってPICT-1をノックダウンした細胞ではPTENのリン酸化(セリン380)が著しく減少していた。またPICT-1への結合能を失っているPTENの変異体でもセリン380のリン酸化が減少していた。セリン380のリン酸化は細胞内におけるPTENの安定性維持に重要であることが既に指摘されていることから、PICT-1はこのリン酸化制御を介してPTENの安定性を制御していると考えられる。今後このリン酸化過程を担うキナーゼおよびホスファターゼを同定し、PICT-1によるこれらの酵素群の制御メカニズムを明らかにすることは重要な課題である。 2、ヒト神経芽腫におけるPICT-1の機能損失とそれに伴うPTENの発現量低下 ヒト神経芽腫(44標品)におけるPICT-1mRNAの発現をRT-PCRによって評価したところ、約50%の頻度で発現の消失や変異がおきていることが明らかになった。さらにPICT-1タンパク質の発現を検討したところ8標品中6標品において、その発現レベルが極めて低いことが観察された。これらの標品ではPTENタンパク質の発現レベルも極めて低く、両タンパク質の発現量の間に正の相関性が認められた。この結果はPICT-1が神経芽腫の発症に対して責任因子として関与していることを示唆しており、今後のゲノム解析などを通じてPICT-1の機能損失メカニズムを明らかにすることが重要であると考えられる。
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