2004 Fiscal Year Annual Research Report
サイズ非対称な脂質二分子膜融合の生物学的意義に関するモデル実験研究
Project/Area Number |
16770112
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
湊元 幹太 三重大学, 工学部, 助手 (80362359)
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Keywords | リポソーム / ベシクル / 脂質二分子膜 / 膜融合 / 人工細胞 / 蛍光顕微鏡 / サイズ非対称 / 両親媒性ペプチド |
Research Abstract |
物性の異なる膜間で生じる「非対称」な膜融合は、生体の物質輸送やウイルス感染などに見られる重要な現象である。本研究は,単純な組成の脂質二分子膜から牟るリポソーム間膜融合をモデル系として解析することにより,膜融合におけるサイズ非対称性の意義を「物質の輸送」の視点から明らかにすることを目的とする。本年度は,非対称膜融合のモデル実験系として,数10μmの巨大リポソーム(GUV)に対する、サブμmのリポソーム(LUV)の融合現象を解析し,次の結果を得た。まず,光顕の観察対象となるGUVと光顕レベル以下のLUVとの融合が,LUVの膜および内水相を標識した蛍光物質のGUVへの移行として蛍光顕微鏡により直接観察できることを確認した。塩基性両親媒性ペプチドによる酸性リン脂質ホスファチジルグリセロール(PG)含有リポソーム膜間の融合において,LUV間融合(サイズ対称)で重要な膜の負電荷中和が,GUV-LUV間(サイズ非対称)では必ずしも必要ないことが分かった。更に,GUVとLUVの中性リン脂質ホスファチジルコリン(PC)/PG組成比を変えることで,LUV間融合は抑制され,かつGUV-LUV間融合は優先して誘起されて封入物質の移行が生じる条件が見出された(第77回日本生化学会大会にて発表)。これは,ターゲットとキャリア間の膜融合において酸性脂質(負電荷)量の差異が制御因子となりうることを示唆する。また,方法改良の計画については,静置水和法によるGUV調製でPCと浸透圧剤(六炭糖類)を溶解したメタノール/クロロホルム溶液から調製した薄膜を用いることで形成効率が著しく改善することを見出した(第42回日本生物物理学会年会にて発表)。次年度は,サイズの差異,脂質組成比のより詳細な検討,さらにモデルとしてエンベロープウイルス-GUV融合解析との比較などを試み,膜融合における非対称性の意義を議論する。
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