2004 Fiscal Year Annual Research Report
蛋白質準安定状態の構造・安定性・出現機構に関する研究
Project/Area Number |
16770123
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
鎌足 雄司 独立行政法人理化学研究所, タンパク質構造研究チーム, 研究員 (70342772)
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Keywords | 蛋白質 / 準安定状態 / 高圧 / NMR |
Research Abstract |
蛋白質には、熱力学的に最安定な天然状態だけでなく、様々な準安定状態が共存し、それらは平衡にある。これら準安定状態の存在や状態間の揺らぎは、蛋白質の機能発現、安定性、寿命などに重要な役割を果たしている。本研究では、この準安定状態の構造・安定性・出現機構を明らかにすることを目標としている。 1.蛋白質の構造形成や準安定構造研究における高圧NMR法の有用性についての総説を執筆した。 2.プリオン蛋白質のNMR緩和実験より、遅い揺らぎを持つ部位が存在することを見いだした。この部位は、これまで病気と関連づけられる変異の蓄積している部位でもあり、また高圧NMR法からも構造変化を引き起こしやすいことが示されていた部位でもあり、プリオン病感染に関与する中間体との関連が注目される。 3.アスパラギン酸プロテアーゼの一種であるペプシンの寿命に重要な役割をはたしているアルカリ変性状態は、特徴的な構造をとっていること、またこの構造がこの蛋白質の巻き戻りにおいて重要な役割を果たしていることを示した。 4.深海に生息する細菌のジヒドロ葉酸還元酵素の構造及び熱力学的安定性に対する圧力・温度依存性を調べ、この蛋白質は、比較的低い安定性にもかかわらず、この細菌の生育環境へよく適応していることを明らかにした。 5.高圧NMR法を用いて、OSSリゾチームのアミロイドプロトフィラメントの高圧下での解離、および、常圧下での会合過程を、可逆的にコントロールし、直接観測することに成功した。これにより、アミロイド線維形成は、部分モル体積の増加を伴う、可逆的な過程であることを示した。 6.ヒトα-シヌクレインのアミロイド形成は、まずN末ドメインとNACドメインを中心に疎水的な残存構造形成が起こり、さらに長い時間スケールでは分子間相互作用により凝集が進むという経路を経て進行することを明らかにした。
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