2004 Fiscal Year Annual Research Report
膜型マトリックスメタロプロテアーゼによる遺伝子発現の制御
Project/Area Number |
16770142
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
後藤 勇 東京大学, 医科学研究所, 助手 (40323638)
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Keywords | ヒトがん / 浸潤・転移 / MMP / MT1-MMP / MTCBP1 / ARD / メチオニン代謝 / mRNAスプライシング |
Research Abstract |
マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は細胞外マトリックス(ECM)を構成するタンパク質を加水分解し、ECMの再構築を促進するタンパク質ファミリーである。膜型MMPであるMT1-MMPは特にヒトがんの悪性化との相関が注目され、がん細胞の浸潤・転移過程における機能が研究されている。われわれはMT1-MMPの機能制御機構を解析するため、MT1-MMPの細胞内領域に結合する新規タンパク質MTCBP1を同定した。細胞株におけるMTCBP1の強制発現は、MT1-MMPによる浸潤亢進を抑制する効果を有した。また多くのヒトがん細胞株でMTCBP1の発現低下が見られた。これらのことから、MTCBP1はがん抑制遺伝子産物である可能性が示唆された(Uekita et al. J.Biol.Chem.2004)。 一方MTCBP1は細菌のメチオニン代謝酵素ARDと有意なアミノ酸配列の相同性を示した。このことからMTCBP1はARDのヒトホモログであり、ヒトのメチオニン代謝系でもARDとして機能することが予想された。これらを検討するため、酵母の遺伝学的手法を用いた。酵母のMTCBP1相同遺伝子を欠失した酵母細胞はメチオニン代謝不全を示し、その細胞へのMTCBP1の発現は代謝不全をレスキューした。これらの結果からMTCBP1は真核細胞においてARDとしての活性を保持することが示唆された(Hirano et al. Genes Cells印刷中)。 さらに現時点での予備的な結果から、MTCBP1はMT1-MMPと結合する細胞膜直下や細胞質と核間をシャトルすること、メチオニン代謝過程と同時にmRNAスプライシングにも関与することが示唆されている。現在MT1-MMPがこれらMTCBP1の機能を調節することで、メチオニン代謝や遺伝子発現を調節する可能性について検討している。
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Research Products
(3 results)