2004 Fiscal Year Annual Research Report
神経分化開始の中心機構としての転写制御因子SOX2の活性制御
Project/Area Number |
16770162
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
内川 昌則 大阪大学, 大学院・生命機能研究科, 助手 (80346147)
|
Keywords | Sox2遺伝子 / 神経誘導 / Wntシグナル / FGFシグナル / BMPシグナル / 原条 |
Research Abstract |
神経誘導の機構を分子レベルで明らかにするために、誘導シグナルに応答するSox2の発現制御機購の研究を行っている。今年度、以下のことを明らかにした。 1,誘導シグナルに応答する制御領域(N-1エンハンサー)の解析 N-1エンハンサーは変異導入実験からA-Eの領域に分かれ、そのうちA, BにはWntシグナル、DにはFGFシグナルが必須であることを示し、E領域は予定神経領域から内中胚葉領域へ細胞が落ち込む際に抑制的に働き、Tbx6Lの関与が示唆された。 2,神経誘導におけるSox2の発現制御 上記の結果は、神経誘導におけるオーガナイザーの役割に疑問を持たせるものであった。Wnt, FGFシグナルはオーガナイザーのみでなく、原条全体で発現され、それに伴いN-1エンハンサーも原条の周囲で活性化された。内在Sox2の発現は原条全体では発現されず、その先端にあるオーガナイザーの周囲に限局された。この違いは、以前から神経誘導で重要な働きが示唆されていたBMPシグナルの作用によって説明された。N-1エンハンサーは活性化されるが、内在Sox2の発現が観察されない領域は、BMPシグナルを阻害することによってSox2の発現が誘導できた。またBMPシグナルを異所的に活性化すると、内在Sox2の発現は抑制された。 この結果は神経誘導におけるSox2の発現が、2段階によって制御されていることを示す。 i)原条から発現されるWnt, FGF両シグナルによって活性化されるが、同時に発現されるBMPシグナルによって阻害されるため、Sox2の発現は開始されない。 ii)オーガナイザーの形成とともに、BMPシグナルの阻害因子が発現され、それによってその周囲でSox2の発現が開始される。 今年度の研究より、今までの神経誘導におけるオーガナイザーの不明瞭な解釈に明確に答えるとともに、新たに原条の重要性を示すことができた。
|