2005 Fiscal Year Annual Research Report
四肢骨形態の計測的特徴に見られる日本列島人類集団の時間的・地域的多様性
Project/Area Number |
16770183
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
瀧川 渉 東北大学, 大学院医学系研究科, 助手 (90323005)
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Keywords | 四肢骨形態 / 日本列島 / 人類集団 / 現代日本人 / 縄文人 / 地域差・地域間変異 / 古人骨 / 形態人類学 |
Research Abstract |
本研究の二年目は、日本列島の広範囲に渡って人骨資料が確保できる集団として縄文人(縄文中後晩期中心)と現代日本人に着目し、各集団の四肢骨の計測的特徴において、それぞれどれだけの地域差が認められるのかを検討した。この目的のために選択した資料は、縄文人では北海道・東北・関東・東海(吉胡)・山陽(津雲)・九州の6地域、現代日本人では東北・関東・北陸・中部・畿内・九州の6地域である。 まず単変量について、それぞれの集団内で地域差を見るために一元配置の分散分析を実施した。その結果、最大長では縄文人も現代日本人も有意差が認められたものはわずかであったが、骨幹径ではかなりの項目で有意差が見られた。また、縄文人と現代日本人との間でその地域間変異の幅を確かめてみたところ、多くの項目で、男女とも縄文人の方が地域的な変異幅が大きいことが確認された。 次に骨長のプロポーションや断面示数に関して同様の分析を行った。プロポーションについては縄文人も現代日本人も有意な地域差はほとんどなかった。他方断面示数では、男女とも縄文人の多くの項目に有意差が出現し、さらに地域間変異の幅も現代日本人より大きくなる示数が多いことが明らかとなった。 また、四肢骨の計測値18項目(最大長と骨幹径)に基づいて、縄文人と現代日本人の各6集団間でマハラノビス距離を求めた。その結果、地域集団間の距離は男女とも縄文人の方が大きくなる傾向にあり、これらの距離を平均してみても、縄文人の平均的な地域間距離は現代日本人の2倍から3倍の大きさになることが判明した。これらの距離を基に多次元尺度構成法によって両集団の相対的な位置関係を二次元展開したところ、やはり縄文人の各地域集団の方が、プロット領域が広くなることが分かった。 以上の結果は、四肢骨の計測的特徴に関する限り、現代日本人よりも縄文人の方が、地域間の変異幅が大きい可能性を示唆するものである。 なお、この研究成果の一部は、2005年11月に横浜市開港記念館で開催された第59回日本人類学会大会において、口頭により発表された。
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Research Products
(2 results)