2005 Fiscal Year Annual Research Report
Pan属の二種における大臼歯歯冠形状の総合的な比較解析
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16770187
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
河野 礼子 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 研究官 (30356266)
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Keywords | Pan属 / 大臼歯 / 歯冠 / エナメル質 / エナメル象牙境 |
Research Abstract |
Pan属の二種、コモンチンパンジーとピグミーチンパンジーの大臼歯歯冠形状について、特にエナメル質分布とエナメル象牙境界面の形状に着目し、比較解析をおこなうことを目的とする。 二種のチンパンジーの大臼歯の、各咬頭ごとの側面エナメル質厚さについて分析した。これに関連し、断面をもちいた歯冠側面エナメル質厚さの計測方法について、大標本の現代人資料を利用しての再検討をおこなってきた。その結果、二次元断面上での歯冠側面エナメル質厚さ評価は、咬頭ごとに放射方向の断面を抽出し、その面での最大の厚さ(計測としては当該計測位置において最小になるように実施)を利用するのが適切であるとの結論に至った。 これに従ってチンパンジー二種の歯冠側面エナメル質厚さを咬頭ごとに調査したところ、基本的に種間で大きな違いは認められないものの、以下のような種ごとの傾向が示唆された。すなわち、全体的にコモンチンパンジーとくらべてピグミーチンパンジーでエナメル質が薄めであること、ピグミーチンパンジーでは近心舌側咬頭のエナメル質がほかより薄いこと、などである。ただしこれらの傾向が限られた標本数において偶然認められたものである可能性は否定しきれないため、今後さらなる検討を要する。また、こうした傾向が機能的に解釈しうるものであるかどうか、歯冠全体の厚さ指標などとの対応を含め、さらに分析を進める必要がある。 また、精細な造型が可能でかつ支持構造が残らない新方式の光造型装置を利用し、実見用模型の作成を進めた。
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