2006 Fiscal Year Annual Research Report
大豆フラボノイド水酸化酵素遺伝子の有する耐冷性機能の解明
Project/Area Number |
16780005
|
Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
戸田 恭子 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 作物研究所・大豆育種研究チーム, 主任研究員 (10360447)
|
Keywords | フラボノイド3'-水酸化酵素 / 大豆 / 液胞 / 抗酸化 / 耐冷性 / 珠皮 |
Research Abstract |
大豆は、開花期の低温により、種皮の裂皮や着色、収量低下などを引き起こす。準同質遺伝子系統(NIL)を用いた比較などから、褐毛品種の方が白毛品種より開花期における耐冷性が高いことが知られているがそのメカニズムは明らかにされていない。研究代表者らは、毛茸色を支配する遺伝子Tがフラボノイド合成系酵素であるフラボノイド3'-水酸化酵素(F3'H)をコードしていることを明らかにし(Toda et al.2002)、耐冷性のメカニズムの仮説として、F3'Hの活性により生成される抗酸化性フラボノイドが、低温ストレスにより発生する活性酸素から組織を防御していることを想定した。そこで、遺伝子の機能と抗酸化性フラボノイドとの関係を明らかにするため、大豆F3'Hの酵素活性を調べ、さらに毛茸色に関するNILであるTo7B(TT)、To7G(tt)を用いてF3'H及びフラボノイドの局在、組織の抗酸化能等を調べた。 サザン解析の結果、大豆F3'H遺伝子には重複がなく、シングルコピー遺伝子であることが示唆された。大豆F3'H遺伝子を形質転換させた酵母のミクロソーム画分に、基質としてnaringeninを混合したところ、F3'Hの生成物であるEriodictyolが検出され、酵素活性が確認された。抗F3'H抗体を用いた抗体染色及び免疫電顕の結果、F3'Hは大豆珠皮の臍および珠柄細胞の液胞で検出された。組織中のフラボノイドの分布をジフェニルホウ酸2-アミノエチルエステルによる染色で調べた結果、フラボノイドが臍および珠柄細胞の液胞と推測される胞に蓄積することが明らかとなった。更に、蛍光色の違いから、To7BとTo7Gでは臍部分に蓄積するフラボノイドが異なることが示唆された。組織のメタノール抽出物をDPPHラジカル消去アッセイで調べた結果、To7Bの臍および珠柄の抽出物のラジカル消去能が、To7Gのものより高いことが明らかとなった。これらのことから、大豆F3'Hの機能により、臍や珠柄の液胞に抗酸化性フラボノイドが蓄積することが示唆された。
|
Research Products
(2 results)