2004 Fiscal Year Annual Research Report
屋久島における草食動物と森林構造の長期動態およびそれらの相互作用の解明
Project/Area Number |
16780107
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
揚妻 直樹 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助手 (60285690)
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Keywords | ヤクシカ / 植生 / 長期動態 / 行動域 / 採食圧 / 相互作用 / 人為攪乱 / 屋久島 |
Research Abstract |
屋久島の食植動物の長期動態と、それに対する人為的攪乱の影響を把握するために、中標高(500m前後)の植林率の異なる4地域においてシカとサルの生息密度調査を行った。シカ密度は古い植林が小規模に入った地域では平方km当たり約50頭であったのに対し、比較的若い植林が半分を占める地域では数頭程度と著しく異なっていた。この傾向は1994年に同様の調査を行ったときの結果と概ね一致しており、シカの生息に与える植林の影響はかなり長期間に及ぶことが解った。サルについては今後分析する予定である。 安定した自然環境におけるシカの土地利用様式を明らかにするために、低地自然林に生息している3歳以上のオス・メス数頭ずつを対象に、ラジオテレメトリー法により、春(4-5月)、夏(7-8月)、秋(10-11月)、冬(1-2月)にそれぞれ約1ヶ月間の調査を行った。2002年からの調査結果を解析中であるが、以下のことが解ってきた。彼らの遊動域は基本的に数〜数十ha程度であったが、メスのほうがオスに比べてやや狭い傾向にあった。メス個体では1.5km以上の遊動域のシフトが季節内および季節間でほとんど見られなかったのに対し、オス個体ではしばしば遊動域のシフトが繰り返し観察された。なかには遊動域を約8kmシフトさせていた個体もいた。このことからメス個体は狭い地域を安定的に集中利用するのに対し、オス個体はいくつかの集中利用する場所を持ち、その間を移動していることが解った。ただし、その移動性と季節性(交尾期など)にははっきりとした傾向は見えなかった。 シカが非常な高密度で生息している低地自然林の森林動態を把握するために、1989年に毎木調査を行ったプロットで同様の調査を行い比較した。また、十分なサンプルサイズではないが、以下のような結果が得られた。胸高直径5cm以上の樹木のサイズと個体数の関係はL字構造が維持されていた。さらに、この15年間で死亡した個体数と、更新した個体数がほぼ一致しており、調査したプロットでは、森林更新が安定して行われてきたことになる。今後、サンプルサイズを増やすことで、この傾向を確認したい。シカが植生に与える影響を把握するために中標高・照葉樹林に15m四方程度の防鹿柵を2個設置し、内外の植生調査を行った。今後、植生の変化を継続観察する予定である。
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