Research Abstract |
本研究は対象地を九州本島に限定し,伐採地の時間的・空間的出現動向とシカ生息・被害分布について10〜30年の時間スケールからその関連性を検討することを目的としている。今年度は主に,時系列の伐採地の出現パターンを得るために,複数時期のLANDSAT/TMデータを用いた解析を行った。今回用いた衛星データの観測年は,1985,1989,1992,1998年である。シカ被害の空間データとして,民有林・国有林シカ対策担当者連絡会から提供を受けた,ニホンジカによる新植地枝葉採食害の被害調査結果(1998〜99年実施)についてデータ整備を行った。 リモートセンシングデータから得られた伐採地データとシカ被害点のデータを用いて,両者の空間的な関係解析を行った。解析単位エリアを設けて,被害地,無被害地周辺での伐採地パッチの個数,面積,エッジ長について,期間毎に集計を行った。その結果,1985-89年期間において,被害地周辺の方が無被害地周辺と比較して,伐採地パッチ数,面積,エッジ長が有意に大きい値を示すことが明らかにされた。つまり,過去の森林の状態が,その後のシカの生息分布と関連性を持つことが示唆されたといえる。 また,今年度は,上記の広域スケールの解析とは別に,森林簿情報を用いた詳細スケールの解析を実行するために,福岡県英彦山周辺のデータ整備を行った。まず,福岡県よりシカ生息密度に関するデータの提供を受けた。それに加え,福岡県の森林GISデータを,市販のGISソフト(Arc/Info)に取り込むため,データの変換を行った。また,対象地の一部を含む衛星地図画像(BASEIMAGE)を取得し,森林環境の現況を把握できるようにした。なお,これらのデータを用いた詳細スケールの解析は現在進行中である。
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