Research Abstract |
まぐろ延縄漁具における浮縄間の幹縄途中に浮子(以後,中立ブイ)を装着することにより,一鉢中の釣鈎間に生じる水深差を小さくして,漁具全体を深く沈めることにより,海亀類の分布水深を避けて,なおかつ主要漁獲対象種であるまぐろ類の遊泳水深により多くの釣鈎を配置させることができる新しい漁具を考案した。計3鉢のまぐろ延縄に中立ブイを装着した漁具を用いた操業実験により,漁具の敷設水深と,幹縄および枝縄のふかれを調べた。中立ブイを用いない通常の漁具では72mであった水深差は,中立ブイを一鉢中の一ヶ所に用いた漁具では45m,二ヶ所に用いた漁具では31mに減少させることができた。また,GPS内臓ブイと超音波ピンガーを用いる事により,漁具の3次元敷設形状を計測し,海中の流れの影響で枝縄と幹縄がふかれている様子を把握することができた。 定置網への海亀類の入綱実態を把握するため,日本全国の大型定置網とサケ定置網を対象にアンケート調査を行なった。定置網の操業状況と海亀の入網に関する項目で設問を構成し,得られた回答を漁獲統計の地域区分に沿って集計した。1,112通のアンケートを郵送し,294通の回答を得た。定置網の種類は落網が多く,北海道や日本海北区では,中・底層網の割合が高かった。海亀が入網している定置網の種類は落網が多く,北海道や日本海北区では,中・底層網の割合が高かった。海亀が入網している定置網は北日本および日本海側ほど少なく,南日本で多かった。しかし,入網頻度の低い北日本では,入網した海亀が死亡している例が多かった。入網時の発見場所は魚捕部である箱網が多かった。中・底層網では,入網時に呼吸のための浮上ができないために死亡する割合が高くなると考えられた。しかし,このような例は主に冬季に北日本で見られる事から,水温の影響についても検討する必要がある。また,キンコへ入網しても必ずしも死亡する割合が高くなる訳ではなかった。
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