Research Abstract |
海亀混獲回避型まぐろ延縄漁具(中立ブイ・システム)の操業実験を館山湾において行い,漁具の敷設水深に影響を与える「ふかれ」の現象を調べた。実験用漁具(一鉢あたりの枝縄数5本,幹縄長180m,浮縄長10m,枝縄長20m)計5鉢の中央鉢両端にある幹縄と浮縄結着点,中央の枝縄と幹縄の結着点およびその釣針部の計4ヶ所に取り付けた超音波ピンガーによって得られた漁具位置のデータから,漁具は北東方向に流され,その移動方向および速度は,幹縄が敷設されている水深30m層の流れ(平均流速約13cm/s,流向43°)と概ね一致した。まな,枝縄のふかれの方向も50m層の流向と概ね一致していたことから,延縄漁具の形状は敷設される層の流れに大きく影響され,特に枝縄のふかれによって,釣針は理論上計算される水深より浅く敷設されることがわかった。 中立ブイ・システムを用いて,海亀類の混獲回避と漁獲対象種の釣獲率向上を実現させるためには,漁具全体を深く敷設させる必要がある。そこで,十分に長い(100m)浮縄を用いた延縄漁具の操業実験をインド洋において行った。幹縄の枝縄結着点の敷設水深は,通常鉢の73.8〜199.4mに対して,中立ブイを装着した鉢では,127.6〜186.7mとなり,海亀類の混獲回避に有効とされる100m以深に幹縄を敷設させることができた。長い浮縄や中立ブイを使用することによる操業上の支障はほとんどなく,作業に慣れた試験後半では,浮縄と幹縄の連結点は,浮縄長とほぼ等しい水深90m以深に敷設された。 鹿児島県笠沙町漁業協同組合の定置網(計3ヶ統)の操業に同行し,入網した海亀の放流方法や,放流作業が操業に与える影響について調べた。入網した海亀を放流する機会は,箱網を絞り込んだ後の漁獲物取り込み作業直前にしかなく,前肢をロープで吊り上げる方法と,たも網のフレームにのせる方法の2種類の方法で放流されていた。海亀の放流が操業に与える時間的な影響はほとんどなく,また漁業者もその作業に手慣れている様子が伺えた。しかし,海亀による漁獲物の損傷や,手鉤による海亀の損傷,また海亀捕捉時の作業性を考慮すると,より簡便な方法を考案する必要があると考えられた。
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