2004 Fiscal Year Annual Research Report
臭素系難燃剤PBDEによる日本沿岸漂着鯨類の汚染とその影響に関する研究
Project/Area Number |
16780139
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
梶原 夏子 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 助手 (80363266)
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Keywords | 臭素系難燃剤 / ポリ臭素化ジフェニルエーテル / PBDE / 鯨類 / 有機塩素化合物 / POP |
Research Abstract |
1)PBDEsの新規分析法の確立 PBDEsには、ベンゼン環に1〜10個臭素原子が置換した多種多様な異性体・同族体が存在する。その中でも、これまで分析が困難とされていたDecaBDEなど高臭素化体5異性体の測定を試みたところ、各異性体に適した^<13>C内部標準物質を添加することによりガスクロマトグラフ質量分析計で定量に成功した。さらに、国立環境研究所、米国・NIST、オランダ・Fire Projectの主催する3つのPBDE分析相互検定に参加し、本分析システムの精度は良好であることを確認した。 2)PBDEs汚染の実態解明 本研究で確立した分析法を用いて、1996〜2001年に日本、香港、フィリピン、インドに漂着した鯨類の脂皮を化学分析に供した。分析に供したすべての漂着鯨類からPBDEsが検出され、その汚染はアジアの途上国にまで拡がっていることが確認された。PBDEsの最高濃度は香港の検体から検出され、次いで日本に漂着した鯨類で相対的に高い濃度がみられ、フィリピンやインド海域に生息する鯨類はきわめて低濃度の汚染レベルを示した。また、日本海を回遊ルートに含むイシイルカ型イシイルカから検出されたほぼ全ての有機ハロゲン化合物の残留濃度は、太平洋側に生息するリクゼン型イシイルカよりも高値を示し、PBDEs濃度は約10倍の差が認められた。このことは、日本海は西部太平洋に比べPBDEsや他の残留性有機汚染物質の汚染負荷が顕在化していることを示しており、日本海周辺諸国からの汚染物質流入と海域の閉鎖性がその主要因と考えられた。カツオを指標生物としてPBDEs汚染の地理的分布を明らかにした我々の以前の研究では、東シナ海で採取した試料かち最高濃度が検出されている。以上のことから、日本海や東シナ海沿岸にPBDEsの汚染源が存在することが推察された。
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Research Products
(4 results)