2005 Fiscal Year Annual Research Report
臭素系難燃剤PBDEによる日本沿岸漂着鯨類の汚染とその影響に関する研究
Project/Area Number |
16780139
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
梶原 夏子 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 助手 (80363266)
|
Keywords | 臭素系難燃剤 / ポリ臭素化ジフェニルエーテル / PBDEs / 有機塩素化合物 / POPs / 鯨類 |
Research Abstract |
1)PBDEs汚染の経時的推移の解明 化学物質汚染の経年的な動向を明らかにすることは、汚染の現状を理解し規制の効果を検証する上で重要である。そこで、1970年代から継続的に収集・保存してきた三陸沖のキタオットセイの脂肪組織を供試して、PBDEs汚染の経年的推移を解明し、他の残留性有機汚染物質(POPs)の動向と比較した。その結果、オットセイから検出されたPCBsやDDTsの濃度は1980年代初頭で最高値を示し、その後明瞭に低減したのに対し、PBDEsの濃度には1990年代後半まで上昇傾向が認められ、その汚染は今後しばらく継続することが予察された。同様に、1982年と2001年に日本沿岸に集団座礁したカズハゴンドウの有機ハロゲン化合物汚染を比較したところ、PBDEsの濃度は20年間で約10倍増加しており、HCHsやHCBの残留を上回るレベルで検出された。またPBDEsの異性体パターンは、両種ともに近年の個体ほど高臭素化体の残留割合が増加しており、日本など北太平洋周辺諸国で使用された製剤の種類の変化を反映した結果と考えられた。一方、中国南部に漂着したスナメリの場合、過去10年間でPBDEs濃度は約5倍上昇していたが、その異性体パターンに変化は認められず、低臭素化体を主成分とした製剤の継続的な使用が推察された。以上の研究により、途上国にもPBDEsの汚染源の存在することが示唆され、臭素系難燃剤の使用状況に関する情報の集積と汚染実態調査域の拡大が今後の課題となった。また、PBDEs汚染の経時変化のピークが既存のPOPsに比べ明らかに遅いことは、今後、継続的・長期的モニタリングが必要なことを示している。 2)PBDEsの生物濃縮特性 PBDEsの生物濃縮の特徴を他のPOPsとともに検討したところ、沿岸性鯨類・スナメリの胃内容物と脂皮から見積もったPBDEsの生物濃縮係数(BMF)は、有機塩素化合物の中でも高いBMFを示すPCBsやDDTsと同程度であった。以上の研究により、新規有害物質PBDEsは、既存のPOPsと同様に食物連鎖を通して栄養段階の高次生物に高濃縮することが示唆された。
|
Research Products
(6 results)