Research Abstract |
本年度は,おもにつぎの2点について研究を遂行した.(1)微生物増殖・死滅予測モデル構築のための速度論的データ収集とモデル構築,(2)アグリフードチェーンにおける環境変動下における品温,菌密度の時空間分布のダイナミック予測である. (1)では,農産物に常在する菌の殺菌,抑菌を行う目的で,加熱処理や電気分解水による非加熱処理実験を行い,種々の条件における生存曲線を明らかにした.その結果,B.cinerea, M.fructigenaの加熱殺菌が一次反応速度式により整理され,死滅速度にアレニウス型の温度依存性があることが明らかになった.この結果は,文献値とよく一致するとともに,統計的処理によって死滅曲線の分布幅が明らかとなった.さらに,電気分解水によるゴボウの非加熱殺菌実験では,電解水のpH,ORP,浸漬時間の違いが殺菌に与える影響について検討し,その効果を明らかにした.特に,pH4以下,浸漬時間10分以上で顕著な効果があることが示された. (2)では,アグリフードチェーンのなかでも,収穫後の前処理の段階に当たる加熱処理に関する研究を行った.ここでは遠赤外線照射による青果物表面の加熱殺菌処理について実験を行い,加熱工程における動的殺菌評価を行った.前年度に開発したCFDによる動的予測モデルを3次元に拡張し,青果物の幾何モデルをCADにより作成することによって,より厳密な表面殺菌予測モデルを構築した.実験の結果,予測モデルの精度の高さが確認され,モデルの妥当性が検証された.この成果を次項に示した雑誌論文2編にまとめ報告した. 以上,本年度は微生物挙動予測の基礎データ収集と赤外線加熱処理モデルの開発を行ったものであり,食品の安全性評価を行う上での有用な成果であると考える.
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