2004 Fiscal Year Annual Research Report
野草地放牧下における家畜の行動特性からみた草類の種子散布の定量的解析
Project/Area Number |
16780185
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小倉 振一郎 東北大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (60315356)
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Keywords | 野草地 / 牧草地 / 放牧牛 / 糞塊 / 種子散布 / 発芽 / 地形 / 採食 |
Research Abstract |
放牧家畜の糞を介した植物種子散布の実態を解明するため,野草地および牧草地に肉用育成牛10頭を5月から10月まで放牧し,植生および牛の採食状況を調べた。同時に牛の移牧直前から7-8日目まで経時的に新鮮糞塊を3-4個採取し,以下の処理下で発芽植物種と実生数を記録した。(1)シャーレ:糞塊の約1/10量をナイロン袋中で水洗後,残渣中の種子をシャーレに置き,恒温器中(15℃/25℃,各12h)で30日間観察。(2)ポット:糞塊の1/10量を水で溶解しバーミキュライトと腐葉土を入れたポットに撒き,野外で90日間観察。(3)放牧地:残りの糞塊を排糞地点に戻し90日間観察。 牧草地における単子葉植物の花序密度は5-7月に最も大きく,9月以降に枯死した。ハルガヤとレッドトップでは花序が葉群にくらべ最大約20cm高かったが,ミノポロスゲでは花序は葉群内に存在した。牛の採食頻度は花序密度の高い6月中-下旬に高かった。糞からの発芽実生数は牧草地→野草地移牧時に最大125本/100g糞(シャーレ)となり,多くはミノボロスゲであった。穂が葉群内に存在する種では,牛の葉部採食時に種子が摂取されやすいものと推察される。一方,野草地で出穂・結実した45種のうち糞塊から発芽した種はほとんどなく,この要因について今後調査する必要がある。また放牧地の発芽実生数はポットやシャーレにくらべ少なかったため,糞中種子のおかれる環境が発芽に影響を及ぼすことが示唆される。 また今年度は,放牧家畜の土地利用と排糞地点について調べるため,GPS(LOTEK GPS 3300LR)を導入した。まず人間が機器を持ち圃場を歩き位置測定し,機器の正常性を確認した。排糞地点の地形調査では,糞塊の70%が斜度10度未満に存在し,東-南向き斜面の糞から多くの実生が発芽する傾向を示したことから,排糞地点の地形が糞中種子の発芽に影響を及ぼす可能性がある。
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