2005 Fiscal Year Annual Research Report
野草地放牧下における家畜の行動特性からみた草類の種子散布の定量的解析
Project/Area Number |
16780185
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小倉 振一郎 東北大学, 大学院農学研究科, 助教授 (60315356)
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Keywords | 採食 / 種子成熟 / 植生 / 草冠構造 / 地形 / 肉牛 / 排糞 / 放牧草地 |
Research Abstract |
放牧草地における植生動態を予測し,草食家畜による植生管理技術を確立する上で,家畜の排糞を介した植物の種子散布現象の解明は重要である。今年度は,1)放牧家畜による植物種子の摂取要件の解明,および2)糞中種子の発芽環境としての家畜の排糞地点植生および地形の実態把握を行った。 1)肉用育成牛が放牧されている山地放牧地において,同草地に広く分布し,かつ放牧家畜の排糞による種子散布が報告されているハルガヤ(Ao),ミノボロスゲ(Cx)およびケンタッキーブルーグラス(Pp)について,優占群落内の穂密度,穂高および葉群高,牛による穂の採食頻度を調べた。また各草種の種子形成率および発芽率を経時的に調べた。各草種の優占群落内における平均穂密度はAo>Cx>Pp(それぞれ2,120, 1,240および994本/m^2),種子密度はAoで47,000粒/m^2,Cxで131,000粒/m^2であった。AoおよびPpの穂の採食は,ほとんどが種子成熟前にみられたが,Cxでは種子発芽能の高まる6月上旬以降に認められた。AoおよびPpでは穂高>葉群高であったが,Cxでは穂高≒葉群高であったため,家畜の葉部採食時に穂が摂取されたものと推察される。 2)5,8および10月に,放牧牛にGPSを装着して位置および行動を23-28日間記録した。また6,8および11月に放牧堆内の調査地(800m^2×2ヶ所)地点に存在した新鮮糞塊について,排糞地点の地形と植生を記録した。牛群は10度を超える斜面をほとんど利用せず,また8月には日中林内での休息頻度が高まった。Ao, Cx等の草本の優占揚所では庇陰された糞塊割合は10-27%と低かったが,6-8月の林縁および林内では65-80%の糞塊が一部または完全に庇陰されていた。排糞地点は家畜の行動と密接に関連し,その環境が糞中種子の発芽およびその後の定着に影響を及ぼす可能性がある。
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