2004 Fiscal Year Annual Research Report
反芻家畜の主要栄養代謝関連ホルモンにおけるグレリンネットワークと栄養代謝
Project/Area Number |
16780188
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
杉野 利久 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 助手 (90363035)
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Keywords | グレリン / GLP-1 / 反芻動物 / 栄養素 / 神経系 / ヒツジ / ウシ / 家畜栄養生理学 |
Research Abstract |
栄養現象は、内分泌的因子と神経系の調節によって統御されているため、家畜生産を向上させる上で、家畜生産機能に関わる内分泌的因子と神経系による栄養代謝の調節機構の解明が不可欠である。栄養現象を最初に感知する器官である消化管は、中枢神経系から多くの神経終末が投射されており、また脳内に存在する多くのホルモンが消化管組織からも分泌されている。グレリンは、胃から分泌され、下垂体前葉に直接作用しGH分泌を促進する。また十二指腸から分泌されるGLP-1は、膵ラ島B細胞に直接作用してインスリンの分泌を促進する。しかしこうした消化管ホルモンの主要栄養代謝関連ホルモンに対する作用は、多様な消化器官と機能を有する様々な家畜種での作用は不明である。本研究は、反芻家畜を用いて、グレリンの他のホルモンとの関係や栄養代謝調節における役割を明らかにすることを目的とし研究を行い、以下の結果を平成16年度に明らかにした。 1.ヒツジにおいてグレリンおよびGLP-1分泌は、胃以降の下部消化管で直接的に栄養素の作用を受ける事を明らかにした。 2.ヒツジにおいてグレリンは、膵αアミラーゼの分泌量が増加するような栄養素により、その分泌が促進される事を明らかにした。 3.ヒツジにおいて血液中の揮発性脂肪酸は、グレリン分泌を抑制し、GLP-1分泌を促進する事を明らかにした。 4.ヒツジにおいてコリン作動性神経は、グレリンの分泌を抑制し、GLP-1分泌を促進する事を明らかにした。 5.ヒツジにおいて血液中の揮発性脂肪酸とコリン作動性神経遮断薬は、グレリン、GLP-1、GHおよびインスリンの分泌に対して、交互作用を示す事を明らかにした。 6.一般的にグレリンは低栄養状態で分泌が促進されるが、乾乳牛において同エネルギー摂取レベルの粗飼料と濃厚飼料では消化吸収性の高い濃厚飼料給与の方が、血中グレリン濃度を増加させる。これは、反芻胃での消化吸収性が高い濃厚飼料給与により、グレリン分泌臓器である第四胃への飼料移行量が粗飼料給与と比較し少ないため、絶食や空腹感により分泌が促進されるグレリンの血中濃度が増加したと推察される。しかし、グレリンのGH分泌促進作用は、濃厚飼料給与で弱まる事を明らかにした。 以上の事から、グレリンやGLP-1の分泌や作用は、栄養素、神経系、栄養素の消化性などの影響を受けることが示された。
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