2005 Fiscal Year Annual Research Report
暑熱に起因する酸化ストレスがウシ初期胚に与える障害の評価と制御
Project/Area Number |
16780209
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Research Institution | 独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構 |
Principal Investigator |
阪谷 美樹 独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構, 九州沖縄農業研究センター畜産飼料作研究部, 研究員 (00355687)
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Keywords | 高温環境 / ウシ / 体外受精卵 / 酸化還元状態 |
Research Abstract |
体外受精胚の培養液に還元剤であるβ-mercaptoethanol(b-ME)添加することで、胚の酸化還元状態ならびに胚の発生にどのような影響があるのかを検討した。屠場由来卵子を体外受精した胚は発生培養開始2日目に分割率を判定後、対照区(38.5℃)と高温処理区(41.0℃)の2つの群に分け、さらにb-MEを0,10,50μMの濃度で培地に添加した3区、合計6区にて検討した。高温処理区は発生培養開始2日目に41.0℃6時間の処理後、対照区と同じ38.5℃条件で8日目まで培養を行った。発生培養はすべて5%酸素,5%二酸化炭素の湿度飽和気相下にて行った。8日目に胚盤胞形成率を求め、各区とも胚盤胞構成細胞数をbis-benzimide, propidium iodideによる簡易二重染色法によって算出した。また2日目高温処理直後に胚を採取し、蛍光試薬を用いて胚内活性酸素量を測定し、高温処理直後と終了24時間後にmRNAを採取し、ストレスタンパク質であるHSP70.1の遺伝子発現量を検討した。胚盤胞発生率は10uMのb-ME添加により高温曝処理区において、未添加区と比較し有意に上昇した。胚盤胞構成細胞数に有意差は認められなかったが、高温処理区ではb-ME 10uM添加区において他の区と比較し多い傾向が認められた。高温により増加した胚内活性酸素は濃度にかかわらずb-MEの添加により抑制された。HSP70.1の発現は処理直後では差はなかったが24時間後には未添加区で発現が増加する傾向が認められた。以上より適度な濃度でのb-ME投与は暑熱による胚の酸化障害を防ぎ、さらに発生率を改善したことから、高温環境による胚の損耗防止に有効である可能性が示唆された。この結果は第106回日本畜産学会大会にて口頭発表を行った。
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