2006 Fiscal Year Annual Research Report
ムギ類マイコトキシン汚染予防のためのDNAマーカーを使った病原菌の動態解明
Project/Area Number |
16780224
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
須賀 晴久 岐阜大学, 生命科学総合研究支援センター, 助手 (20283319)
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Keywords | フザリウム・グラミネアラム菌 / マイコトキシン / 系統 / 個体識別 / DNAマーカー / マイクロサテライトマーカー / ムギ類 / 動態 |
Research Abstract |
本年度は‘菌は同じ場所で生息し続けているのか?それとも移動しているのか?'という菌の動態解明のために収集した1年目熊本圃場集団(K1)及び播種に用いた種子集団(SK1)、2年目熊本圃場集団(K2)及び種子集団(SK2)の全菌株(46菌株×4集団=184菌株)について、系統情報及びマイクロサテライトマーカー(座)による多型(対立遺伝子)データを得た。その結果、ほとんどの菌株が第6系統、4菌株のみが第7系統と、西日本全体における状況と同様であった。得られた対立遺伝子データ(但し、この際、毒素タイプは一つの座として扱った)を集団遺伝学的解析にかけたところ、1)同一個体はSK2集団中の6株のみで(2株×3組)、他全ての菌株は別個体であること、2)遺伝的多様度(調べた11座中、2個体問で対立遺伝子が異なった座数の平均値)が集団内、集団間共に5.4-6.2と非常に高いこと、3)4集団間のFs七値(集団間の遺伝的分化の尺度)が0.001-0.026と非常に低いことが判明した。これにより、同一圃場におけるムギ類赤かび病が毎年異なる菌集団で起こされることが分かった。また、同一個体と判定された3組について圃場内の分離地点を調べたところ、同一組の菌株はいずれも近接地点で分離されていた。これは菌のクローン増殖で侵される圃場内の場所が限定的であることを示している。更に、集団の遺伝的多様性が非常に高かったことは、本菌が他個体間で高頻度に交配していることを示唆ししている。今回SK1は福岡県産、SK2は長崎県産の種子からの菌集団である。これらとK1及びK2とあわせた全4集団間のFst値が非常に低かったことは、九州北部のフザリウム・グラミネアラム菌が一つの大きな任意交配集団であることを示している。2002年に九州各地から分離された31菌株について同様のデータを取得し、これを1集団として解析したところ、上記4集団とのFst値は0.04-0.06と弱冠高かった。これは本菌の場合、集団間の距離が離れることで遺伝的分化の程度が大きくなっていくことを示唆している。
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Research Products
(3 results)