2004 Fiscal Year Annual Research Report
動物用医薬品による水域土壌汚染とその環境挙動の解明ならびに水圏生物へのリスク評価
Project/Area Number |
16780227
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
中田 晴彦 熊本大学, 大学院・自然科学研究科, 助手 (60311875)
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Keywords | 動物用医薬品 / 抗生物質(フルオロキノロン類) / 水域土壌汚染 / 下水廃水処理施設 / 汚染源 / 環境挙動 / 水圏生物 / リスク評価 |
Research Abstract |
[研究目的] 近年、欧米を中心にヒトや家畜用医薬品による生態系の汚染が問題になっている。とくに、下水処理水には数10種類の抗生物質が高濃度に残留していることが知られているが、日本における医薬品汚染に関するデータは極めて少ない。そこで本年度の研究は、ヒトおよび家畜用抗生物質として需要が増加しているものの、研究例の少ないフルオロキノロン類について、水質を対象にした新たな分析法を開発し、それを下水処理水および河川水に応用することを目的とした。 [結果と考察] 水道水(約500ml)に、既知濃度の8種類のフルオロキノロン標準物質を添加し、性質の異なる5種類の固層カートリッジカラムへ個別に通水した。その後、有機溶媒で目的物質を溶出し、各物質の回収率を調べた。その結果、3M Empore社製のMixed-phase cation (MPC) exchange cartridgeが最も良好な値を示し、このカートリッジが水質の医薬品分析に適していることを確認した。また、溶出溶媒にはアンモニアとメタノールの混合液を用いたが、アンモニアの存在比が5%のとき、最も回収率が高いことがわかった。 下水処理場の水質を分析したところ、ヒト用の抗生物質であるオフロキサシンが100-204ng/Lの範囲で検出された。一方、処理場周辺の河川水を分析したところ、全ての測定物質が検出限界以下を示し、抗生物質が河川で希釈された様子が窺えた。海洋微生物を用いたオフロキサシンのLD_<50>値は14μg/Lとの報告があり、本研究の濃度値はその値に比べ2桁程度低かった。このため、オフロキサシンが原因で重大な生体影響が現れる可能性は低いと考えられたが、この種の物質が粒子に吸着して沈殿したスラッジ中には、高濃度の汚染が疑われるため、来年度は土壌やスラッジなど、固形試料を対象にした医薬品分析法の確立と、その環境試料への応用に関する研究を進める予定である。
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Research Products
(2 results)