2005 Fiscal Year Annual Research Report
抗菌薬排出蛋白質の分子機構-細菌の小型排出蛋白質を例として-
Project/Area Number |
16790029
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
菊川 峰志 北海道大学, 創成科学共同研究機構, 助手 (20281842)
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Keywords | 多剤耐性 / 膜蛋白質 / SMR / EmrE |
Research Abstract |
構造上相関の無い様々な薬物を細胞外へと排出する多剤排出蛋白質は、化学療法における大きな障害として注目されるだけでなく、その機能の面からも非常に興味深い蛋白質である。本研究は細菌において見出された最も小型の多剤排出蛋白質(SMR)の基質輸送機構を明らかにすることを目的としている。 分光学的測定など、物理化学的な方法を用いることが、基質輸送機構の詳細を調べるためには必須であるが、そのためには、目的蛋白質の高純度な精製が不可欠である。本研究では、様々なタグをSMR蛋白質に融合し、大量発現を実現させて、高純度な精製を行うことを目指してきた。 今年度はタグとして、GST、Trx、Nus、CBD、MBP、T7gene10を、SMR蛋白質としては、大腸菌のEmrE、古細菌のHsmr、枯草菌のEbrABを用い、網羅的に融合蛋白質の大腸菌内における発現とその後の精製を試みてきた。その結果、特にNus、MBP、T7gene10を、EmrEに融合させ、かつ、20℃程度の低温下で培養した時のみ、大量発現が可能であった。HsmrとEbrABについては、いずれのタグを用いても発現は確認できなかった。 大量発現したEmrEの融合蛋白質について、その後の粗精製とタグの切断を試みたが、Nusについては精製中の分解が問題であり、また、T7gene10は封入体として発現する性質のため、可溶化とプロテアーゼによる切断が非常に難しいということが判った。MBPはタグの切断までは成功した。しかし、その後のEmrE部分の回収にまだ改善が必要である。EmrEは有機溶媒で抽出できるほど脂溶性が高い。この特殊な性質が、タグ切断後のEmrEを非常に不安定にしているのかもしれない。したがって、脂質存在下での切断など回収時の改良が必要であると考えている。
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