Research Abstract |
難治性気道炎症性疾患である嚢胞性線維症(CF)病態時にTLR2遺伝子の発現上昇が起こっているか否かをquantitative RT-PCR法を用いて検討した.その結果,健常人由来の気管支上皮細胞16HBE14o-細胞に比べ,CF患者由来の気管支上皮細胞CFBE41o-細胞におけるTLR2の発現が高いことが明らかになった.次に,CFBE41o-細胞にTLR2のリガンドであるpeptidoglycan(PGN)を処理したところ,NF-κBの核内移行及び活性化および炎症性サイトカインであるIL-8やIL-1βの発現誘導が観察されたことから,CFBE41o-細胞には,機能的なTLR2が高発現していることが確認できた. CFBE41o-細胞におけるTLR2の発現上昇がどのようなメカニズムで起こっているかを検討した.最初に,CF細胞において引き起こされていることで知られるER overload response(EOR)が関与しているか否かを検討するため,EOR誘導剤であるTunicamyin, DTT, thapsigarginを,気管支上皮細胞に処理し,TLR2遺伝子発現に対する影響を観察した.その結果,16HBE14o-細胞およびCFBE41o-細胞の両細胞において,EORは誘導されたが,TLR2遺伝子の発現は影響を受けなかったことから,CFBE41o-細胞におけるTLR2遺伝子発現上昇には,EORが関与していないことが示唆された.次に,どのような細胞内シグナル分子がTLR2発現上昇に関与しているかを検討するために,各種細胞内シグナリング阻害剤をCFBE41o-細胞に処理し,そのTLR2遺伝子発現変化を観察した.その結果,CFBE41o-細胞におけるTLR2の発現上昇には,NF-κB, MAPK, PI3K,プロテアソームなどの細胞内シグナル分子は関与していないことが示唆された.
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