2005 Fiscal Year Annual Research Report
新規な肥満・糖尿病制御要因:外来異物による脂肪組織Ah受容体活性化機構の研究
Project/Area Number |
16790088
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
吉成 浩一 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (60343399)
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Keywords | 白色脂肪組織 / Ah受容体 / 脂溶性化合物 / βナフトフラボン / CYP1A1 / エネルギー代謝 / 異物代謝 / 定量的PCR |
Research Abstract |
ダイオキシンなどのある種の脂溶性化合物は生体内に取り込まれた後脂肪組織に高濃度で蓄積するが、これら化学物質の脂肪組織に対する影響についてはほとんど知られていない。前年度までに私達は、脂溶性の高いチトクロムP450(CYP)1A誘導剤であるβナフトフラボン(BNF)がラット副睾丸白色脂肪組織においてもCYP1A1を誘導することを報告したが、白色脂肪組織はトリグリセリドの貯蔵や生理活性物質の分泌を介して生体の糖質・脂質ホメオスタシスに重要な役割を果たしていることから、脂溶性化合物の曝露は脂質・糖質代謝にも影響を与える可能性が考えられる。本年度はまず異物除去関連遺伝子に対する影響についてさらに解析を進め、白色脂肪組織では脂溶性化合物の曝露によりCYPだけではなく第II相酵素や抗酸化酵素の発現誘導も起こること、またこれら遺伝子の発現調節にはAh受容体やNrf2が関与していることを明らかにした(投稿中)。さらに、脂溶性化合物の糖・脂質代謝に対する影響について解析を行い、白色脂肪組織における糖・脂質代謝関連遺伝子のmRNAレベルを定量的PCR法により測定し、BNF投与により18遺伝子のmRNAレベルが変動することを見出した。これらの変動のうちのいくつかはAh受容体やNrf2を介していることを示唆する結果も得られた(投稿準備中)。以上の研究成果により、脂肪組織に蓄積した脂溶性化合物はAh受容体などの転写因子の活性化を介して様々な生体反応を引き起こしていることが明らかとなった。今後は、本研究によりAh受容体リガンドによる発現変動が示された遺伝子についてその転写機構の詳細を解析するとともに、疫学的研究によりダイオキシンの曝露と脂質代謝異常の関連性が示唆されていることから、脂肪組織を介した脂溶性化合物の生体全体に及ぼす影響について解析を進めていく必要があると思われる。
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