2004 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍選択的薬物送達を目的とした葉酸修飾抗がん剤封入脂質微粒子製剤の開発
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16790112
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
川野 久美 星薬科大学, 医薬品化学研究所, 助手 (20366834)
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Keywords | 抗癌剤 / 薬物送達システム / 脂質微粒子 / 葉酸修飾 / 癌化学療法 / 選択的薬物送達 / ドキソルビシン / リポソーム |
Research Abstract |
がん化学療法に用いる抗がん剤の治療効果増強と副作用軽減を目指し、ドキソルビシン封入葉酸修飾脂質微粒子製剤の開発を行った。これまでに、抗がん剤ドキソルビシンを脂質微粒子であるリボソームに封入した血中滞留性製剤は、薬物の体内動態を変化させて抗がん剤の有害作用を大幅に減少させることが報告されている。本研究では、負電荷を有する脂質を微粒子成分に用い、ドキソルビシンを静電的に封入することで微粒子調製の簡便化を試み、さらに腫瘍選択的に抗癌剤を送達するために、腫瘍細胞に過剰発現している葉酸レセプターを標的とした新規葉酸修飾ドキソルビシン封入脂質微粒子製剤の開発を行った。微粒子の構成成分には、生体膜成分であるリン脂質とコレステロール、血中滞留性を向上させるポリエチレングリコール脂質を用いた。正電荷薬物であるドキソルビシンを微粒子に封入するためにコハク酸トコフェロールやオレイン酸等の負電荷脂質を添加したところ、総脂質/薬物比が10-20において80-90%の高い薬物封入率を有し、粒子サイズは約150nmと小さい製剤が得られた。血中に長時間滞留する微粒子は、腫瘍組織の特性により、腫瘍に集積しやすいことが知られている。そこで調製されたドキソルビシン封入微粒子をマウスに尾静脈内投与し、薬物の血中濃度を測定したところ、ドキソルビシン溶液投与群より血中に長時間滞留したが、腫瘍の治療効果を得るには十分ではなかった。これは薬物が静電的に微粒子表面に保持されていることにより、静脈内投与後、血中成分との相互作用などにより速やかに微粒子から放出されてしまうためと推察した。そこで微粒子の内部にドキソルビシンを封入する方法に変更したところ、血中濃度が大幅に改善することが明らかとなった。これに葉酸修飾を行うことで、選択的薬物送達により治療効果が増強することが期待される。
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