2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16790130
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
森川 俊一 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (70339000)
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Keywords | 血管新生 / ペリサイト / 血管内皮細胞 / スプラウティング / VEGF / c-Kit / 創傷治癒 / 腫瘍 |
Research Abstract |
(1)病理組織の血管新生機序について、より詳細に理解するため、既存血管壁からの内皮細胞スプラウティングに加え、骨髄由来の間葉系幹細胞の血管新生への関与を検索した。マウス皮膚創傷治癒モデルを用い、血管内皮細胞マーカーとしてPECAM-1(CD31)、ペリサイトマーカーとしてNG2 proteoglycan、さらに間葉系幹細胞のマーカーとしてc-Kit(CD117)のそれぞれの抗体で多重免疫染色を施して共焦点レーザー走査顕微鏡で観察を行ったところ、PECAM-1陽性の血管周囲にc-Kit陽性の細胞群が分布することが観察された。これらの細胞は術後1日目から多数観察され、c-Kit陽性細胞が血管壁に密接して存在する像も往々認められた。さらに、このような密接部位では、c-Kit陽性細胞は内皮マーカーであるPECAM-1も同時に発現していることが明らかとなった。これらの所見は、局所における血管新生が、その場の既存血管壁からの内皮細胞のスプラウティングのみならず、血流に乗って局所に現れる間葉系幹細胞によっても引き起こされる可能性を示すものと考える。 すなわち、間葉系幹細胞が既存血管壁に導入されて、新生血管内皮細胞として伸長を遂げることが推測される。BrdUを用いた過去の検索においては、血管新生部に増殖像を示す新生内皮細胞および新生ペリサイトの存在が多数確認されているが、上記のようにc-Kit陽性反応がPECAM-1陽性反応と共在する場面は往々認められたものの、対照的にc-Kit陽性反応がペリサイトマーカーのNG2陽性反応と重なる場面は全く認められなかった。このことは、血管新生局所で多数認められるペリサイトが、間葉系幹細胞からではなく、既存の血管壁ないしは周囲の結合組織から増殖(あるいは分化)することを示唆するものであり、興味深い所見と考えている。これらの成果については、平成17年の第110回日本解剖学会総会・全国学術集会シンポジウム「血管系をめぐって:部位特異性と形成機構の問題点」において発表を行う予定である。 (2)新生血管のスプラウティングにおけるペリサイトの積極的な関与を探るため、マウス皮膚創傷治癒モデルを用い、血管内皮成長因子であるVEGF-Aに対する免疫組織化学染色を行った。biopsy punchを使用した本創傷モデルでは、術後5日目に血管新生のピークをみることがこれまでの検索で明らかになっているが、VEGF-Aの陽性反応は、術後5日目に新生血管に多数付随して認められるペリサイトに局在して観察され、ペリサイトによる血管内皮細胞増殖の促進の可能性が強く示唆された。この結果については平成16年の日本解剖学会関東支部第92回学術集会で発表を行った。これらの所見の普遍性に関しては、マウス腫瘍を用いた他の血管新生モデルにおいても検索を続行中である。また、以上に平行して、ペリサイトにおけるVEGF-AのmRNA局在の同定についても、上記の血管新生モデルでin situ hybridizationを行う準備を進めている。
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Research Products
(4 results)