2004 Fiscal Year Annual Research Report
伸展力を介した血管平滑筋トーヌスのカルシウム感受性制御
Project/Area Number |
16790133
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
吉岡 和晃 金沢大学, 医学系研究科, 助手 (80333368)
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Keywords | 血管平滑筋 / 伸展力 / Rho / Rhoキナーゼ / ミオシン・フォスファターゼ / カルシウム感受性調節 |
Research Abstract |
血管抵抗の調節、すなわち血管平滑筋のトーヌスの調節において、自律神経(特に交感神経)、アドレナリンなどの種々の生理活性物質が果たす役割は周知のことであるが、血管平滑筋に備わっている自己調節機構の重要性に申請者は着目した。本研究では、血管平滑筋トーヌスの調節機構のうち、特にRho-Rhoキナーゼから成るCa^<2+>感受性調節機構に的を絞って、伸展力によるその制御分子機構を明らかにすることを目的とした。ラット胸部大動脈より単離した培養血管平滑筋細胞及びウサギ摘出動脈に定量的に伸展刺激を行い、Rho活性化(GTP結合型Rho)、MBSリン酸化、MLCリン酸化の測定を行った結果、以下のことが明らかとなった。 i)ラット培養平滑筋細胞に培養細胞伸展装置を用いて、伸展刺激(5%伸展、60Hz)を負荷した結果、Rho活性化及びMBSリン酸化共に刺激後5分をピークに約1.5倍上昇した。また、伸展刺激によるMBSリン酸化亢進は、イオノマイシン存在下において相乗的に増加することが分かった。 ii)伸展刺激によるMBSリン酸化亢進は、脂質キナーゼ阻害剤及びRhoキナーゼ阻害剤により有意に抑制された。 iii)ウサギ摘出動脈を用いた実験において、等尺性張力測定装置を用いて伸展刺激を定量的(150-200%)に負荷した結果、MLCリン酸化の有意な増加が観察された。このMLCリン酸化の亢進は、脂質キナーゼ阻害剤及びRhoキナーゼ阻害剤の前処理により、有意に減弱した。 以上の結果から、培養血管平滑筋及び摘出血管において、伸展力刺激はRho-Rhoキナーゼの活性化を介してMLCリン酸化のCa^<2+>感受性を制御していることが明らかとなった。更に、このCa^<2+>感受性調節には、新規脂質キナーゼが関与することが示された。今後、伸展力の作用機序の全貌が明らかにすることによって、将来的には血管トーヌス自己調節機構を標的とした新しい薬剤の開発も期待できる。これらの薬物は、脳循環改善薬、高血圧治療薬、抗血管れん縮薬として期待される。
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