2004 Fiscal Year Annual Research Report
細胞膜伸展刺激による心筋緩徐活性型遅延整流性K^+電流調節機構
Project/Area Number |
16790135
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
豊田 太 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (90324574)
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Keywords | 心筋細胞 / イオンチャネル / パッチクランプ法 / 心電図QT延長症候群 / 遅延整流性K^+電流 / PIP_2 / KCNQ1 / KCNE1 |
Research Abstract |
心筋緩徐活性型遅延整流性K^+電流(I_<Ks>)は正常な活動電位の再分極過程に必須の外向き電流で,I_<Ks>チャネルの機能不全は致死性不整脈の発生を引き起こす心電図QT延長症候群の原因となる.心筋細胞膜の機械的伸展によりは増大する.本研究はこの機序を明らかにすることで,I_<Ks>チャネルの新しい細胞内調節機構を見出すことを目的とする.近年,膜に含まれるホスファチジルイノシトール二リン酸(PIP_2)が種々のイオンチャネルの活性を修飾することが明らかにされるとともに,細胞膜の機械刺激により膜のPIP_2含量が変化することが報告されていることから,本研究はPIP_2によるI_<Ks>の両説機構について検討した.モルモット単離心筋細胞に全細胞型パッチクランプ法を適用し,I_<Ks>チャネル電流をリアルタイムで記録した.細胞膜に内在するPIP_2合成系の重要な酵素のひとつであるPI4キナーゼの阻害剤であるウォルトマンニンを記録電極経由で細胞内へ投与すると,数分オーダーでI_<Ks>チャネル電流が増大した.一方,PIP_2を同様に投与すると,I_<Ks>チャネル活性は減少した.このように,内在性のPIP_2を減少させる薬剤や外因的に投与したPIP_2そのものがI_<Ks>チャネル活性を大きく変化させることが明らかとなった.さらにPIP_2の減少を招くと考えられる生理的インターベンションのひとつである受容体刺激によるI_<Ks>の調節に膜PIP_2の動態が関与する可能性について検討した.心筋細胞膜に存在するアドレナリン(α1)受容体やATP(P2Y)受容体はG蛋白(Gq)ならびにPIP_2分解酵素であるホスホリパーゼC(PLC)に連関している.フェニレフリンやATPを細胞外から心筋細胞に投与すると,速やかにI_<Ks>チャネル電流が増大した.しかしながら,細胞内に過剰量のPIP_2を投与した状態でこれらのアゴニストで受容体を同予に刺激するとI_<Ks>チャネル電流の増大反応が明らかに抑制されていた.これらのことから,1)PIP_2はI_<Ks>チャネル活性に抑制的に作用していること,2)Gq-PLC連関型受容体刺激によるI_<Ks>の増大反応に内在性のPIP_2の減少が関与していること,が示唆された.しかしながら,I_<Ks>チャネルの構成蛋白として同定されているKCNQ1ならびにKCNE1で培養細胞に再構築したチャネルはPIP_2に対して全く反対の反応を示すことが報告されてきている.このことは,I_<Ks>チャネルの構成蛋白としてKCNQ1ならびにKCNE1以外の調節性サブユニットが存在する可能性を示唆するものと考えられる.
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Research Products
(4 results)