2005 Fiscal Year Annual Research Report
記憶および慢性疼痛制御における神経ペプチドPACAPの神経可塑性調節機構
Project/Area Number |
16790154
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
新谷 紀人 大阪大学, 薬学研究所, 助手 (10335367)
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Keywords | Apelin / VEGF / RF / 6A cell / HIF-1α / 遺伝子欠損マウス / 眼奇形 / KKAy / 糖代謝能 |
Research Abstract |
本研究では、中枢・末梢神経系の可塑性制御における神経ペプチドPACAPの役割を明らかにすることを目的として、PACAP遺伝子欠損マウス(PACAP-KO)が示す表現型異常(主に記憶異常および慢性疼痛異常)を指標とした研究を行い、本年度は以下の知見を得た。 1.PACAP-KOへの急性脳室内投与について投与後のタイムコース等を変えて再評価したところ、本マウスの記憶異常、新規環境における多動、および行動場所の嗜好性異常が、全て20 pmol PACAPの脳室内急性投与によって野生型と同程度まで改善されることを明らかとした。 2.PACAP-KOの記憶異常は、定型抗精神病薬(D_2受容体遮断薬)のハロペリドールでは改善されないが、非定型抗精神病薬(D_2/5-HT_2受容体遮断薬)のリスペリドンで改善されることを見出した。本成績により、PACAP-KOの記憶異常は、本マウスで認められる感覚運動機能や意欲の異常、あるいはヒト統合失調症の認知機能障害などと類似した抗精神病薬反応性を示すことが明らかとなった。 3.さらに5-HT_2受容体拮抗薬のリタンセリンが、リスペリドンと同様にPACAP-KOで認められるぼぼ全ての行動異常(記憶異常を含む)を劇的に改善させることを見出し、本マウスの異常行動発現に5-HT_2受容体の機能亢進が関与する可能性を示した。 4.記憶の座・海馬と同様に、グルタミン酸とPACAPの協調作用が報告されている視交叉上核に着目し、本神経核特異的なアレイ解析を行なった。初年度に同定した"神経可塑性異常に関連しうる分子群"と一部重複する分子群の発現がPACAP-KOで変化していたことから、本マウスの脳各部位では、共通してグルタミン酸シグナルの機能変化が起きている可能性が示された。 前年度および以上の結果から、PACAP-KOの神経可塑性異常には5-HT_2シグナルの機能亢進やグルタミン酸シグナルの機能変化が関与すること、そしてPACAPは精神行動や意欲の調節と比較的共通した分子基盤を介して、神経可塑性を調節することが明らかとなった。
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Research Products
(7 results)