2004 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病ラット血管内皮細胞の遺伝子発現変化における生理機能の解明
Project/Area Number |
16790155
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
小林 恒雄 星薬科大学, 医薬品化学研究所・機能形態研究室, 助手 (90339523)
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Keywords | 糖尿病 / 血管内皮細胞 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
1-a).2型糖尿病モデル動物であるGoto-Kakizakiラットにおいて、若年例のGK ratにおいては、内皮機能(内皮依存性弛緩反応の増加、NO産生の増加)の亢進が認められ、これは、NO合成酵素の増加が関与している事を示した。一方、老年例においては、NO合成酵素の増加にもかかわらず、内皮機能の減弱が認められた。この事は、NO合成酵素とNO産生は相関しないことを示し、NO合成酵素の活性を制御している因子の存在が考えられる。1-b).日本人の糖尿病患者の多くは、insulin非依存性の2型糖尿病であるが、この2型糖尿病における研究は、動物価格が非常に高価な為に進んでいないのが現状である。今回、新規2型糖尿病動物を作成すると共に、血管内皮細胞機能の検討も行った。nicotinamide i.p.前処置後、streptozotocin (STZ)をi.v.投与したマウスは、血糖値、インスリン値、グルコース負荷試験においてもインスリン抵抗を伴った2型糖尿病動物であると確認された。この糖尿病マウスの胸部大動脈における内皮依存性弛緩反応において、PI3-K/Akt経路を介するα_2受容体やinsulin刺激によるNO産生や弛緩の減弱、更にこの弛緩の減弱には、Aktの発現、活性の低下が関与することが示唆された。2).1型糖尿病モデルであるSTZラット腸間膜動脈床においては、内皮由来過分極因子の作用の減弱が生じ、この原因として、cAMP-dependent-protein kinase(PKA)の活性の減弱が関与していること、PKA触媒subunitの発現パターンの異常が関与していることを報告した。3).STZラット脳底動脈において、3-a).K-channel openerによる弛緩反応が減弱し、この減弱はインスリンの慢性投与によって改善する。3-b).内皮細胞から産生するNO代謝の異常が生じ、これは、superoxideのscavengerであるSODの低下やsuperoxide産生酵素であるNADPH oxidaseの亢進が関与している。3-c)エンドセリン(ET-1)による収縮の増加が生じ、これはET-1の産生増加、受容体の増加であることを示した。これら血管障害における新しい生理機能の解明は、糖尿病性血管機能障害の治療方針や予防方法に多大なる影響を示すと期待している。
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