Research Abstract |
(目的) 我々は,造血器腫瘍において免疫受容体遺伝子の多様性を利用した,allele - specific oligonucleotide real-time quantitative PCR (ASO RQ-PCR)法によるMRDの定量的法を開発・実践してきた.本法では,多様な免疫受容体遺伝子の共通領域にconsensus probeを設定することで,蛍光プローブの大幅なコストダウンに成功し,検査室レベルでの臨床応用を可能にした.しかし,(1)N-regionが数塩基と短い場合には偽陽性が生じる,(2)NHLではプローブのに生じたmutationのためにconsensus probeを使えない場合がる,などの欠点があった.これらの理由で解析不可能な症例は,小児ALLで10%,悪性リンパ腫で30-40%であった.そこで当該研究課題では,これらの問題を解決するために,最近開発されたMBG (minor groove binder)技術を応用したプローブ・プライマーを用いることにした. (方法) (1)基礎的検討 1.ALL100例の初診時骨髄単核球からDNAを抽出し,IgH, Igκ, Igλ, TCRについて増幅する. 2.NHL70例についても診断時,リンパ節ならびに,骨髄単核球からDNAを抽出し,IgH, Igκ, Igλ, TCRについて増幅する. 3.増幅したPCR断片をpGEM-T easy vectorに挿入し,クローニングシークエンスを行い,塩基配列を決定する. 4.共通領域を決定し,MGBブローブ/プライマー(ASO-primers)をprimer express (ABI v1.5)を用いて設計する.(IgHのVH geneについてはconsensus probe/primerは決定済み) (2)ALL, NHL患者の治療後1ヶ月,3ヶ月,6ヶ月,12ヶ月における骨髄あるいは末梢血単核球からDNAを抽出し,ABI prism 7700(ABI)を用いて,MRDをMGB-ASO RQ-PCR assayを用いて定量化する. (結果) 1.ALL 78例の初診時骨髄単核球からDNAを抽出し,78例中61例(78%)でIgH遺伝子を増幅し得た.クローニングシークエンスを行い,塩基配列を決定した. 2.ALL 61例において10本のMGBプローブを作製し,さらに症例特異的なASO-primersを設計した. 3.ALL 61中44例において治療後1ヶ月,3ヶ月,6ヶ月における骨髄から単核球からDNAを抽出し,MRDをMGB-ASO RQ-PCR assayを用いて定量化した. (考察) MBG技術を応用したALLのMRD定量化システムは腫瘍特異性,感度に優れ,効率的な臨床応用が可能である.
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