2004 Fiscal Year Annual Research Report
プロテオミクスによるレジオネラ感染制御因子の網羅的解析
Project/Area Number |
16790258
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
三宅 正紀 静岡県立大学, 講師 (00295560)
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Keywords | レジオネラ / 増殖相 / 病原性 / 病原因子 / プロテオミクス / 2-D DIGE / MALDI-TOF / MS |
Research Abstract |
病原細菌における様々な蛋白質の発現は菌の増殖相に依存して制御されていることが知られている。対数増殖後期におけるLegionella pneumophila (Lp)は、ストレス耐性、細胞毒性、運動性、ファゴリソソーム形成阻害能などの病原性に関与する能力の上昇が見られることから、Lpの病原性を制御する因子の発現調節が増殖相に依存してなされていると推察されている。本年度は、DIGE (2 Dimensional Differential Image Gel Electrophoresis)システムを用いて、対数増殖期及び対数増殖後期におけるLpの全菌体蛋白質の発現量を比較解析し、発現変動の見られる蛋白質をマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析装置(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometry ; MALDI-TOF/MS)及び2004年に発表されたLpゲノムDNA全塩基配列に基づくバイオインフォマティクスを駆使して同定することにより、新規病原因子となりうる蛋白質をゲノムスケールで網羅的に探索した。その結果、有意に発現変動が認められる菌体蛋白質合計106個を検出した。これらは、対数増殖後期で発現増加が認められたスポットが92個、逆に減少したスポットが14個であり、このうち38個の蛋白質の同定に成功した。同定された蛋白質の約8割は、対数増殖後期にて発現が増加しており、その中には解糖系、TCA回路や脂質代謝に関連した酵素が多く含まれていた。Lpは本来糖の酸化や発酵を行なわず、エネルギー源として主にアミノ酸を利用することが知られているが、今回の結果より、対数増殖後期ではアミノ酸の枯渇によってLpがアミノ酸以外のものをエネルギー源として利用するための経路が活性化される事が推測された。このことは栄養が十分に供給されない感染宿主内で、菌が宿主のエネルギー産生系を利用して生存、増殖する可能性を示唆するものであった。また、その他にストレス蛋白質、鞭毛構成蛋白質、twitching motilityあるいは走化性に関連する蛋白質の発現上昇がみられ、これらは既知のLp病原因子との機能的関連が類推されることから、新規病原因子となりうる可能性が推察された。
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