2004 Fiscal Year Annual Research Report
角化細胞分化に連動したヒトパピローマウイルスクロマチンの転写複製機構の解明
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16790278
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
柊元 巌 国立感染症研究所, 遺伝子解析室, 主任研究官 (70291127)
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Keywords | ヒトパピローマウイルス / クロマチン / 転写 / 角化細胞 / 細胞分化 |
Research Abstract |
クロマチン構造を取ったヒトパピローマウイルス(HPV)ゲノムを用いて、角化細胞分化に連動してHPVの転写と複製を制御する細胞蛋白質を探索し、HPVクロマチンの転写複製の分子機構を明らかにすることが本研究の目的である。本年度は、実験材料として用いるHPVミニクロモソームを無細胞系で構築した。HPV16型の環状ゲノムDNAをピストン及びヒストンシャペロン蛋白質NAP-2、クロマチン再構築因子ACFと共に混合し、ATP分解のエネルギーを用いてクロマチン再構築反応を行った。規則的なヌクレオソーム間隔を有したHPVミニクロモソームが作成されたことを、マイクロコッカスヌクレアーゼによる切断反応によって確認した。次年度はこのHPVミニクロモソームを用いて、角化細胞分化に連動してHPVクロマチンの構造を変化させる細胞蛋白質を生化学的に探索する予定である。また細胞分化特異的にクロマチン構造が変化することが知られているHPVのE7遺伝子領域に、ヒト転写因子C/EBPβの結合配列が存在することを新たに見いだした。組換えC/EBPβ蛋白質を大腸菌で作成し、E7領域のDNA断片を用いたゲルシフトアッセイを行い、二箇所のC/EBPβ結合部位を同定した。このC/EBPβ結合部位に塩基置換変異を導入すると、その結合が消失することから、C/EBPβがこの部位に配列特異的に結合することが示された。この結合の生理的意義を検討するために、E7遺伝子下流にルシフェラーゼ遺伝子を置いたリポータープラスミドを作成し、C/EBPβの発現がリポーター活性に及ぼす効果を調べた。C/EBPβはリポーター活性を増強し、この効果には同定したC/EBPβ結合部位が存在することが必要であった。さらにクロマチン免疫沈降法により、C/EBPβがこの二箇所の部位に細胞内で結合することを明らかにした。C/EBPβが角化細胞の分化を誘起することがこれまでに示されており、C/EBPβがHPVクロマチンに直接結合することで、分化特異的なウイルスプロモーターの活性化に関与する可能性が示唆される。
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