2004 Fiscal Year Annual Research Report
市場理論を応用した医療における情報の非対称性緩衝に向けた研究
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16790300
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
谷口 泰弘 岐阜大学, 大学院・医学研究科, 助手 (90359737)
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Keywords | 情報の非対称性 / 逆選択 / モラルハザード / レモン市場 / エージェンシー問題 |
Research Abstract |
医療における情報の非対称性に関して、医療者・患者関係の分類がなされ、情報の非対称性の存在を指摘はなされているものの、それを緩衝させるような能動的研究には発展していない。実行性の伴う医療システムの創造が求められている社会環境のなかで、これを緩衝させる取り組みを検討することは有用である。インフォームド・コンセントの法理を成熟させる諸活動、リスクマネジメントの手法等の医療提供側の取組みによって問題克服の試みがなされ知識の蓄積が進んできた。しかし、医療技術の更なる進歩によって、情報の非対称性の拡大も考えられ、患者側(医療消費者側)の視点も交えた全体的な機会集合での取組みを指摘し、対応の方法を考究することは情報の非対称性の緩衝に向けた取組みの発展を促す契機と成りうる。本研究は、医療の持つ特殊性から医療者・患者間で情報を完全に共有するには限界があり、予め情報の非対称性の存在を認めたうえで両者の誘因整合性が保たれるようなシステム開発をすることを目的に、基礎的研究を行った。研究材料として、実際の社会経済活動の中で行われているモラルハザード・逆選択、インセンティブ契約、PA(依頼人・代理人)関係を問題群として抽出し整理を試みた。方法は文献を中心とする質的研究を試みた。医学系データ・ベース、医学系中央雑誌、Pub Med、社会科学系データ・ベース、Magazine Plusを1993年から2003年までの期間、「情報の非対称性」を検索語に検索をかけた結果、それぞれ4件、72件、550件がヒットした。その文献の内容について検討を加えた。医療行為は社会科学系の文献が指摘するよりも情報が複雑であり、価格情報、品質情報の市場取引で求められる情報の他に、理解・想像力、実践力、権威等の要素が集合する。これによりスクリーニング・シグナリング(逆選択の場合)、モニタリング・インセンティブ付与(モラルハザードの場合)等が働き難く、非対称性が生じ易い環境下にあることが判明した。考察として、医学・医療の権威主義的側面と自由主義的側面を対比させ、両者に欠落する問題点を指摘した。知識偏重型になり、稀少資源社会に存在することが抜け落ちている。社会構成員が主体的に参加すること、制度設計を行うことの重要性を記述した。平成17年度にまとめの作業を行う。
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Research Products
(1 results)